...私も嘗て、本郷なる何某と云うレストランに、久米とマンハッタン・カクテルに酔いて、その生活の放漫なるを非難したる事ありしが、何時か久米の倨然たる一家の風格を感じたのを見ては、鶏は陸(くが)に米を啄(ついば)み家鴨は水に泥鰌(どじょう)を追うを悟り、寝静まりたる家家の向う「低き夢夢の畳める間に、晩くほの黄色き月の出を見出でて」去り得ない趣さえ感じたことがある...
芥川龍之介 「久米正雄」
...前よりも輝かないのと嘗ては燃えたつやうな真紅(しんく)の唇が...
テオフィル・ゴーチエ Theophile Gautier 芥川龍之介訳 「クラリモンド」
...汝はわが別後いかなる苦を嘗めしかを知らざるべし...
ハンス・クリスチアン・アンデルセン Hans Christian Andersen 森鴎外訳 「即興詩人」
...嘗(かつ)て見たこともないけだものであった...
江戸川乱歩 「吸血鬼」
...嘗(か)つて誰か...
太宰治 「花吹雪」
...種々(いろ/\)の艱難辛苦を嘗(な)めた挙句...
田山花袋 「ある僧の奇蹟」
...未(いま)だ嘗(かつ)て人に対して言うべからざるもの有らざるのみ」の語を守袋に入れ...
徳富蘇峰 「吉田松陰」
...こうして現実の世界が実際に嘗めて来た貴重な時間上の自然的秩序は...
戸坂潤 「日本イデオロギー論」
...政治家たるの準備と素養あるもの果して幾人ぞ夫れ經國の大才は難し學堂亦嘗て此れに當るの實力を世間に示したることあらず故に世間唯だ彼れを大言壯語の虚才として...
鳥谷部春汀 「明治人物月旦(抄)」
...けれども私は嘗て...
豊島与志雄 「溺るるもの」
...嘗て同家の藏品搜索を乞ひしも...
内藤湖南 「日本の肖像畫と鎌倉時代」
...嘗て、少年を喜ばした処の、空想力に依った科学的探険談は、現在の加速度的なテンポで進歩して止む処を知らない科学の知識によって書き改められるべき時に到達しているのである...
直木三十五 「大衆文芸作法」
...始終嘗(な)めなければならない事になつた...
夏目漱石 「それから」
...僕は未だ「スパルタの法律」から嘗ての乱酔者たる己れの罪を放免せずに...
牧野信一 「ベツコウ蜂」
...ちよつと嘗(な)めてみたりしてから云ひました...
宮沢賢治 「狼森と笊森、盗森」
...私はことのほか多くの難儀を嘗(な)めたのです...
柳宗悦 「民藝四十年」
...詩形の標準新体詩は嘗て一たび秋の芒(すゝき)の如く出でたり...
山路愛山 「詩人論」
...双方のびやかにお茶を嘗(なめ)てお菓子を嗅いで眼や口を細くして語り合いながら...
夢野久作 「鼻の表現」
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