...とっつかまえて見りゃ何のことはない...
芥川龍之介 「海のほとり」
...何のことはない、遊興してよい気持になりかけると入りかわり立ちかわり借金取りが現われるようなものである...
伊丹万作 「私の活動写真傍観史」
...「それぢやア、君、何のことはない、君の友人を喰ひつぶしに歩くわけで、少しも僕の勞力に對する尊敬も謝禮もあつたものぢやアない!」かう云つて、義雄は多少忿懣(ふんまん)の氣味で、自分が樺太の通信を東京の或新聞に引き受けた時でも、その三倍もしくは四倍分を受け取つたことを語る...
岩野泡鳴 「泡鳴五部作」
...まあ何のことはない...
梅崎春生 「ボロ家の春秋」
...静かに水を煽(あお)って平泳ぎを続けるのもあるし――何のことはない...
谷譲次 「踊る地平線」
...何のことはない洞穴でさあね...
田畑修一郎 「医師高間房一氏」
...何のことはない手の甲からズカツと畳まで刺しつけて動けんやうにした...
田畑修一郎 「医師高間房一氏」
...砕けた氷塊の流れにつれて触れ合ふ音は、何のことはない、岸に虫でも鳴いてゐるやうな感じであつた...
田山録弥 「船路」
...その國の司の乘つてゐる斑白毛の馬を中心に七八人ごたごたと渦を卷いてゐるその一行の群が、見馴れた山にも、湖水にも、橋にも、または最後まで別れかねて見送つて來た人達にも別れ別れて、遠く遠くさびしい悲しい野山の旅をして行くさまが、何のことはない、屏風の繪か何かのやうにかれ等の眼の前に動いて行くのであつた...
田山花袋 「道綱の母」
...私は、何のことはない、ちょうど、毛剃九右衛門(けぞりくえもん)の前に引き出された小町屋宗七(こまちやそうしち)といったような恰好(かっこう)で、その婆さんの前に手を突いて、「いろいろとんだ御厄介をかけます...
近松秋江 「霜凍る宵」
...何のことはない、玩具の鴨を弾つようなもので、いくらでもとれる...
豊島与志雄 「話の屑籠」
...その娘だけを船中へ単独で収容して置けば何のことはないのだが...
中里介山 「大菩薩峠」
...そういうことを考慮に置かず、ただ見ていれば、何のことはない、その非凡犬と、小男とが、必死になって、組んずほぐれつしているとしか見えない...
中里介山 「大菩薩峠」
...何のことはない...
中島敦 「光と風と夢」
...眼が覚めるとまたまた鞄をさげて出社‥‥何のことはない...
林芙美子 「愛する人達」
...ヴィレーヂの家という家は、いずれも古めかしく、三階立が主で、定まって赤煉瓦の煤けたもので、庭というものがなく、表には鉄柵の手摺りが出ていて、何のことはない、シカゴの栗の果横丁をちょっと伊達にしたような造りだった...
前田河広一郎 「ニュー・ヨーク 『青春の自画像』より」
...此の時(とき)位(ぐらゐ)藝術家の意久地(いくぢ)の無いことはあるまい、幾(いく)らギリ/\齒(は)を噛(か)むだと謂(い)ツて、また幾ら努力したと謂ツて、何のことはない、破(やぶ)けたゴム鞠(まり)を地(ち)べたに叩付(たゝきつ)けるやうなもので何の張合(はりあひ)もない...
三島霜川 「平民の娘」
...おれは生きた」「どこにも、お負傷(てきず)は」「矢傷の二つや三つ、何のことはない...
吉川英治 「平の将門」
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