...とっつかまえて見りゃ何のことはない...
芥川龍之介 「海のほとり」
...何のことはない、野砲、速射砲の破裂と光弾の光とがつづけざまにやって来るんやもの、かみ鳴りと稲妻とが一時に落ちる様や、僕等は、もう、夢中やった...
岩野泡鳴 「戦話」
...お婆さんがそれに気附かないでそのまま線路を横切って了えば何のことはないのですが...
江戸川乱歩 「赤い部屋」
...よく見ると何のことはない宮城野夫人ではありませんか...
大倉※[#「火+華」、第3水準1-87-62]子 「機密の魅惑」
...何のことはない植木屋のおやじだ...
太宰治 「如是我聞」
...じっさい餓鬼は餓鬼を誘い、弟は兄を、姉は妹を、おふくろは父(とっ)つぁんを、婆さんは爺さまを、鶏は牛を、犬は馬を、みんながみんなを呼び出して来て、隣異と讃嘆をもって遠くから研究的に見物するんだから、こっちで私たちが、ふたりで何か話して笑っても、私が煙草に火をつけても、彼女が鼻へ白粉(おしろい)を叩いても、それがそっくりそのまま、何のことはない、まるで舞台の芝居になっていて、どうも弱ってしまう...
谷譲次 「踊る地平線」
...静かに水を煽(あお)って平泳ぎを続けるのもあるし――何のことはない...
谷譲次 「踊る地平線」
...今になってそんなことをいっては、何のことはない、まるで私を騙(かた)っていたようなものじゃないか」そういうと、女は返答に窮したように黙って焦(じ)れ焦れしながら、肩で大きな息をしているばかりである...
近松秋江 「狂乱」
...」銀子が訊(き)くと、何のことはない...
徳田秋声 「縮図」
...何のことはない、二十代もつづいた大庄屋(おおしょうや)の台所へ来たようなものです...
中里介山 「大菩薩峠」
...ただ抜群なる手柄だけでありさえすれば何のことはないのですが...
中里介山 「大菩薩峠」
...そういうことを考慮に置かず、ただ見ていれば、何のことはない、その非凡犬と、小男とが、必死になって、組んずほぐれつしているとしか見えない...
中里介山 「大菩薩峠」
...何のことはない妄想家流であつて...
中原中也 「音楽と世態」
...まるで何のことはない...
中谷宇吉郎 「雑魚図譜」
...何のことはない、まるで大きな花束のようでした...
ナサニエル・ホーソン Nathaniel Hawthorne 三宅幾三郎訳 「ワンダ・ブック――少年・少女のために――」
...登つて見ると一夜のうちに散り果てゝゐて何のことはないわざ/\出かけて青空を見物に行つたも同然だつたと落胆の挙句だつたので...
牧野信一 「書斎を棄てゝ」
...私にはさっぱり分らないので、ぼんやり顔を見ていると、何のことはない、そこがつまり、同時にホテル・マルノの前で停っていたのだ...
横光利一 「欧洲紀行」
...――たとえ海ほど山ほどの馳走を盛ろうと、もしそれが、心の副(そ)わぬものであったら、何のことはない、人は物に、たばかられているようなものに過ぎない」「わが良人(つま)のお嫌いも、心の副わぬ、物だけの、物脅(ものおど)しでございました」「さればよ...
吉川英治 「新書太閤記」
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