...透かすようにして御窺いなさいますと...
芥川龍之介 「邪宗門」
...固からの耕地でない證には破垣のまばらに殘つた水田を熟と闇夜に透かすと...
泉鏡花 「遺稿」
...固(もと)からの耕地でない証(あかし)には破垣(やれがき)のまばらに残った水田(みずた)を熟(じっ)と闇夜に透かすと...
泉鏡花 「遺稿」
...一度何処(どこ)か方角も知れない島へ、船が水汲(みずくみ)に寄つた時、浜つゞきの椰子(やし)の樹の奥に、恁(こ)うね、透かすと、一人、コトン/\と、寂(さび)しく粟(あわ)を搗(つ)いて居た亡者(もうじゃ)があつてね、其が夥間(なかま)の一人だつたのが分つたから、声を掛けると、黒人(くろんぼ)が突倒(つきたお)して、船は其のまゝ朱色(しゅいろ)の海へ、ぶく/\と出たんだとさ……可哀相ねえ...
泉鏡花 「印度更紗」
...屈腰(かがみごし)に前を透かすと...
泉鏡花 「浮舟」
...芸妓家(げいしゃや)二軒の廂合(ひあわい)で、透かすと、奥に薄墨で描いたような、竹垣が見えて、涼しい若葉の梅が一木(ひとき)、月はなけれど、風情を知らせ顔にすっきりと彳(たたず)むと、向い合った板塀越に、青柳の忍び姿が、おくれ毛を銜(くわ)えた態(てい)で、すらすらと靡(なび)いている...
泉鏡花 「婦系図」
...檐(のき)の下なる戸外(おもて)を透かすと...
泉鏡花 「海異記」
...薄鴇色(うすとき)の下着の模様をほのかに透かす...
上村松園 「画道と女性」
...「花田中尉は居ないか」枝打ち透かす日の色が赤く土間を彩っているのだが...
梅崎春生 「日の果て」
...そして海岸の方へと低まつてゐる路の上を透かすやうにした...
田中貢太郎 「海異志」
...奇麗な空を透かす様に見ていた...
夏目漱石 「それから」
...透かす様にして軒を仰ぐと...
夏目漱石 「それから」
...窓の明りに透かすと薄霞(うすがすみ)を刷(は)いたような脂が焼刃の上を曇らせております...
野村胡堂 「銭形平次捕物控」
...「あんたが私に何か借りを作るのを嫌がっているように見えるんだがな?」ヴォートランは若者の心を見透かすような視線を突き刺しながら叫んだ...
バルザック Honore de Balzac 中島英之訳 「ゴリオ爺さん」
...しかしその湯の何んとすがすがしく透明なことよ! 私はそれを眼より高く差し上げて透かすやうに見入る...
堀辰雄 「馬車を待つ間」
...裸火の光りに透かすようにして見たが...
三上於菟吉 「雪之丞変化」
...闇に透かすと屈強の侍姿に...
山本笑月 「明治世相百話」
...透かすように見て...
吉川英治 「新編忠臣蔵」
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