...固からの耕地でない證には破垣のまばらに殘つた水田を熟と闇夜に透かすと...
泉鏡花 「遺稿」
...芸妓家(げいしゃや)二軒の廂合(ひあわい)で、透かすと、奥に薄墨で描いたような、竹垣が見えて、涼しい若葉の梅が一木(ひとき)、月はなけれど、風情を知らせ顔にすっきりと彳(たたず)むと、向い合った板塀越に、青柳の忍び姿が、おくれ毛を銜(くわ)えた態(てい)で、すらすらと靡(なび)いている...
泉鏡花 「婦系図」
...谿河(たにがわ)を深く透かすと...
泉鏡花 「怨霊借用」
...檐(のき)の下なる戸外(おもて)を透かすと...
泉鏡花 「海異記」
...「花田中尉は居ないか」枝打ち透かす日の色が赤く土間を彩っているのだが...
梅崎春生 「日の果て」
...そして海岸の方へと低まつてゐる路の上を透かすやうにした...
田中貢太郎 「海異志」
...奇麗な空を透かす様に見ていた...
夏目漱石 「それから」
...窓の明りに透かすと薄霞(うすがすみ)を刷(は)いたような脂が焼刃の上を曇らせております...
野村胡堂 「銭形平次捕物控」
...蝶の舌ゼンマイに似る暑さかな暖かや蕊に臘ぬる造り花臘梅や雪うち透かす枝のたけ「蝶の舌」の句は...
萩原朔太郎 「小説家の俳句」
...壜(びん)にいつぱい分けて貰つたのよ」ゆき子はビール壜を窓に透かすやうにして...
林芙美子 「浮雲」
...彼に向けられたヴォートランの見透かすような視線に...
バルザック Honore de Balzac 中島英之訳 「ゴリオ爺さん」
...「あんたが私に何か借りを作るのを嫌がっているように見えるんだがな?」ヴォートランは若者の心を見透かすような視線を突き刺しながら叫んだ...
バルザック Honore de Balzac 中島英之訳 「ゴリオ爺さん」
...芸者屋二軒の間を透かすと...
久生十蘭 「魔都」
...もう一度その鳥の巣を通行人の目につき易いかどうか調べて見るかのやうに見透かすやうにしてゐたが...
堀辰雄 「巣立ち」
...それを透かすやうに見てゐた...
堀辰雄 「不器用な天使」
...楯形に空を見透かす格子の中に...
三好達治 「測量船」
...闇に透かすと屈強の侍姿に...
山本笑月 「明治世相百話」
...透かすように見て...
吉川英治 「新編忠臣蔵」
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