...」と耳立つほど、名を若く呼んだトタンに、早瀬は屹(きっ)となって鋭く見た...
泉鏡花 「婦系図」
...がさ/\する音が耳立つて聞える二人は無言で進む靜なことはこほろぎも鳴かぬ...
伊藤左千夫 「八幡の森」
...夜に入つて雨が又強くなつて梓川の水音も耳立つて強くなつた...
寺田寅彦 「雨の上高地」
...第一に目立つ――否耳立つ?――ものは娯楽である...
戸坂潤 「世界の一環としての日本」
...吾等は居殘りて外濠を過る電車の響の木枯に交りて鋭く耳立つ頃まで...
永井荷風 「鴎外全集刊行の記」
...夏冬ともに人の声よりも小鳥の囀(さえず)る声が耳立つかと思われる...
永井荷風 「葛飾土産」
...時節がらとて船宿の桟橋(さんばし)には屋根船空しく繋(つな)がれ芝居茶屋の二階には三味線(さみせん)の音(ね)も絶えて彼方(かなた)なる御浜御殿(おはまごてん)の森に群れ騒ぐ烏(からす)の声が耳立つばかりである...
永井荷風 「散柳窓夕栄」
...玉蜀黍をゆする風の音につれて道端に鳴く蟲の音が俄に耳立つて來るので...
永井荷風 「羊羹」
...どんよりした闇夜なぞは又、からだが何かに吸いつけられるようで、自分の足音が、いやに耳立つ...
中村清太郎 「ある偃松の独白」
...耳立つほどの外国なまりでバルブレンに話しかけた...
マロ Malot 楠山正雄訳 「家なき子」
...耳立つほど声を落していった...
トオマス・マン Thomas Mann 実吉捷郎訳 「小フリイデマン氏」
...衣(きぬ)ずれの音も耳立つその静かなあいだに...
吉川英治 「新書太閤記」
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