...二人の間はそれ以上には進まなかったが、私は彼の労働者のような体躯と、温厚な、純な顔には段々親しみを増して行った...
辰野隆 「二人のセルヴィヤ人」
...温厚なたちだったけれども...
ドストエーフスキイ 米川正夫訳 「地下生活者の手記」
...この二人しか、一人前に、用いられぬとは――)斉彬の、温厚な、だが、肚のすわった、そして、立派な――広い知識と、高い見識とを思い出すと、筒井政憲の顔を見るのさえ、厭になってきた...
直木三十五 「南国太平記」
...名古屋に人間無きかの如くコキ下ろすのはいいとしても、ここの城主、御三家の一なる御代々をとらえて、噛んで吐き出すようなる悪態が口をついて来たものだから、老巧なのが咳払いをしたぐらいでは追附かず、「こいつは途方もない」「馬鹿!」「気狂(きちが)いだっせ――」場内ようやく騒然として、掴(つか)みかかる勢いを為したものが現われ出したのは、それはまさに、そうあるべきことで、温厚なる医者と、学生を中心とした席であればこそ、ここまでこらえて来たようなものです...
中里介山 「大菩薩峠」
...スティヴンスンより一つ年上の・この博識温厚な青年は...
中島敦 「光と風と夢」
...思出の詩料に残すのは温厚なる小野さんにもっとも恰好(かっこう)な優しい振舞である...
夏目漱石 「虞美人草」
...いかに温厚なる吾輩でもこれは看過(かんか)出来ない...
夏目漱石 「吾輩は猫である」
...前者は線の細い、頭の冴えた、幾らか神經質ではあるが、靜かな、温厚な、優しみのある紳士型、後者は線の太い、鋭い恐ろしい凝視力を持つ、進撃的な、意志的な、力強い鬪士型、そこに想像される二人の氣質の相違は必然に文章の相違となつて現れてゐる...
南部修太郎 「氣質と文章」
...温厚な気質はよく知られている...
火野葦平 「花と龍」
...四十八歳の温厚な小市民型(タイプ)である...
牧逸馬 「アリゾナの女虎」
...あの温厚な科学者風の...
牧野信一 「或るハイカーの記」
...見たとこは極く温厚な学者でしたよ...
三好十郎 「樹氷」
...温厚なる総領は家に残り...
柳田国男 「家の話」
...私も承知をしたことだ」と父はいつもの温厚な調子で云った...
山本周五郎 「赤ひげ診療譚」
...――私は笈川さんを知っていました、温厚な、仁義の篤(あつ)い、まことにいいお人でしたな...
山本周五郎 「いさましい話」
...三右衛門はあまり口をきかない温厚な人で...
山本周五郎 「日本婦道記」
...その温厚な思慮とに見て...
吉川英治 「私本太平記」
...あの温厚な御気性に……魔がさしたとでもいうものか……)彼にはまだどうしても...
吉川英治 「新編忠臣蔵」
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