...この學者――實際この人は、何事にも退嬰的な態度をとることと、その癖平生は人の意見には頓着なしに自分の言ひたいことだけを言ふといつた風な傾きのあることとの二つの學者的な習癖を除いては、殆ど全く非難すべき點のない、温厚な、勤勉な、頭の進んだ學者で、現に東京帝國大學に講師となり、繁劇な新聞の仕事をやる傍ら、其處の商科に社會學及社會政策の講義をしてゐるが、しかしその最も得意とする處は寧ろ國際法學であつて、特にその米國に關する國際法に於ては自分が日本のオオソリチイであると、嘗て彼自ら子供らしい無邪氣を以て語つたことがあつた...
石川啄木 「A LETTER FROM PRISON」
...私を釧路の新聞に伴れて行つた温厚な老政治家が...
石川啄木 「弓町より」
...あの温厚な元気な大使に会って好きにならぬものはあるまい...
海野十三 「人造人間殺害事件」
...温厚なる君子人也...
大町桂月 「足柄の山水」
...温厚なる二重瞼と先が少々逆戻りをして根に近づいている鼻と...
高浜虚子 「漱石氏と私」
...今またそれを舐(な)める」温厚な老学者も...
橘外男 「ウニデス潮流の彼方」
...温厚な人である...
徳冨健次郎 「みみずのたはこと」
...温厚なたちだったけれども...
ドストエーフスキイ 米川正夫訳 「地下生活者の手記」
...他の温厚な社員を選んでしまった...
豊島与志雄 「電車停留場」
...夫婦とも温厚な好人物でした...
豊島与志雄 「水甕」
...人間が誰でも持つて居べき純朴温厚なる本来の感情さへ...
永井荷風 「海洋の旅」
...日ごろ温厚な大庭春吉も...
火野葦平 「花と龍」
...」と評されて温厚な義弟は大きな恥を掻いたさうである...
牧野信一 「天狗洞食客記」
...温厚なる総領は家に残り...
柳田国男 「家の話」
...「仁義に篤(あつ)い、温厚な、まことに珍しい人でしたが、貴方にとっても、おそらくいい父親でいらしたろうな」「――はあ、仰しゃるとおり、いい父でした」「叱られたり折檻(せっかん)されたようなことがありましたか」「いやありません」玄一郎も回想の懐かしさにひきいれられ、両手で膝(ひざ)を抱えながら太息(といき)をついた...
山本周五郎 「いさましい話」
...「本当に温厚なおちついた方ですわ」姉の千賀は含羞(はにか)みながらこう云った...
山本周五郎 「思い違い物語」
...温厚な同君は纔かに微笑して...
與謝野寛・與謝野晶子 「満蒙遊記」
...そして中府の荊州にもこの非難が聞えてきたので、温厚な玄徳も、「憎い腐(くさ)れ儒者ではある」と、直ちに、張飛(ちょうひ)と孫乾(そんけん)にいいつけ、耒陽県を巡視して、もし官の不法、怠慢(たいまん)のかどなど発見したら、きびしく実状を糺(ただ)して来いといった...
吉川英治 「三国志」
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