...「どうだネ、この両方の指紋は……」水田検事の声は、心なしか、すこし慄(ふる)えを帯びているようであった...
海野十三 「蠅男」
...その様子を心なしか...
大倉※[#「火+華」、第3水準1-87-62]子 「消えた霊媒女」
...その中、ぼくの名前でも一通、「おや、これは日本からとは違(ちが)うぞ」とぼくを見た、黒井さんの眼が、心なしか、光った気がしました...
田中英光 「オリンポスの果実」
...心なしか今迄懇意にしていた人々が急に自分を妙な眼で見始めたような気がしてならなかったのに...
谷崎潤一郎 「細雪」
...本当に怖ろしいことでございます」和七は心なしか...
野村胡堂 「銭形平次捕物控」
...本當に怖ろしいことで御座います」和七は心なしか...
野村胡堂 「錢形平次捕物控」
...心なしか見る目に寂しげな影が濃く出ている...
長谷川時雨 「松井須磨子」
...心なしか物の怪でも立ち迷いそうな物凄い有様...
久生十蘭 「魔都」
...斜面を下りながら、彦太郎は、麦藁帽子(むぎわらぼうし)の縁に手をかけて空を見あげ、一雨来るかも知れんと思い、灼(や)けるように陽炎(かげろう)をあげている周囲を見わたすと、心なしか、さっと、一陣の冷たい風が来て西瓜(すいか)畑の葉を鳴らした...
火野葦平 「糞尿譚」
...そういうあの方の後ろ姿は、私の心なしか、いつになくお辛そうにさえ見えた...
堀辰雄 「かげろうの日記」
...心なしか、少女はもう少し疲れてゐるやうに見えた...
堀辰雄 「四葉の苜蓿」
...心なしか潤んでいた...
三木清 「西田先生のことども」
...夜に入ると、心なしか、地は常よりも暗く、天は常よりも怪しげな妖星の光が跳ねおどっていた...
吉川英治 「三国志」
...この日、心なしか、薄雲がみなぎって、日輪は寒々とただ紅かった...
吉川英治 「三国志」
...心なしかその涙をふくんでいるように聞え...
吉川英治 「新編忠臣蔵」
...心なしか、暮れかけている泥湖(どろうみ)の水の光も、孤城の影も、何となく寂(じゃく)として、雨の霽(は)れ間(ま)を身に迫る湿(しめ)っぽい風が蕭々(しょうしょう)と吹き渡っていた...
吉川英治 「茶漬三略」
...心なしか、こよいは、灯も鮮やかに、翳(くも)りなく点(とも)って、なんとなく胸も花やぐようなと、灯占(ひうら)をたてていたが――花田橋ではお許(もと)に待たせたが、こたびはわしが待つであろう瀬田の湖畔に牛をつないでと、武蔵からの便り...
吉川英治 「宮本武蔵」
...心なしか、そう思って、吉野朝以前からというここの古い砦型(とりでがた)の城を仰ぐと、四山の春は迫って来ているに関(かか)わらず、どことなくしいんとして冷寂な感がある...
吉川英治 「宮本武蔵」
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