...とにかく一度は恋されたのですから...
芥川龍之介 「二人小町」
...一度はそれを自分の問題として寝食を忘れてもつくした人が...
伊藤野枝 「転機」
...一度は墓場へも往(ゆ)かなければならないが...
薄田泣菫 「茶話」
...何人もまず一度はどうしてもこの『心経』を手にする必要があります...
高神覚昇 「般若心経講義」
...夢かとばかり、一度は呆れ、一度は怒り、老の兩眼に溢るゝばかりの涙を浮べ、『やよ悴(せがれ)、今言ひしは慥に齋藤時頼が眞の言葉か、幼少より筋骨(きんこつ)人に勝れて逞しく、膽力さへ座(すわ)りたる其方、行末の出世の程も頼母しく、我が白髮首(しらがくび)の生甲斐(いきがひ)あらん日をば、指折りながら待侘(まちわ)び居たるには引換へて、今と言ふ今、老の眼に思ひも寄らぬ恥辱を見るものかな...
高山樗牛 「瀧口入道」
...兎に角一度は農商務大臣たりしこともあり...
鳥谷部春汀 「明治人物月旦(抄)」
...一度はだまされた悪者共も――もう一と組鍵があるはずではないか――と気のついたのも無理のないことでした」「――――」「祖父は一代に巨億の富を積んだだけに至って考えのち密な人で...
野村胡堂 「九つの鍵」
...一度は引付けなすったが...
野村胡堂 「銭形平次捕物控」
...久吉は店へ歸つたのか」「一度は店へ歸つたが...
野村胡堂 「錢形平次捕物控」
...私は毎日一度は覗くが...
野村胡堂 「錢形平次捕物控」
...その一度は、どこで経験し、どこで考えたかということを、彼は考えさかのぼるのであった...
葉山嘉樹 「海に生くる人々」
...こうして一度は助けられたが...
久生十蘭 「重吉漂流紀聞」
...何時(いつ)か一度は露顕(ろけん)すると思(おもっ)て...
福澤諭吉 「福翁自伝」
...狂人は拔目(ぬけめ)がなく惡意があつて自分の見張りが時々氣を弛(ゆる)めるときに乘ずることを見逃しはしない――一度は自分の兄を刺したナイフを藏(かく)し...
ブロンテイ 十一谷義三郎訳 「ジエィン・エア」
...敵に様子を悟られぬやうに一度は悉くの者が物蔭に身を潜めて...
牧野信一 「船の中の鼠」
...「知っているのは、当りまえではありませんか?」と、お初は笑って、「おはずかしいけれど、あたくしも、一度は、あの男に、迷わされた身でございますもの――あの晩の騒ぎにしろ、実は、そのように薄情(はくじょう)にするなら、御息女のことを、世間にいいふらす――と、あたくしが、焼餅(やきもち)が昂(こう)じて申したのがきっかけで、あんな馬鹿らしいことになったのでございました」「おお、左様か」と、平馬は、いくらかホッとしたように、「拙者は又、この事が、早くも世間に洩れているのかと、びっくりいたした...
三上於菟吉 「雪之丞変化」
...その一度は、父がまったく健やかでありながら突然気を失って、わたしの腕に倒れかかったときである)、わたしはいつも、腹の底から、まず第一にラテンの言葉を発したのである...
ミシェル・エーケム・ド・モンテーニュ Michel Eyquem de Montaigne 関根秀雄訳 「モンテーニュ随想録」
...そのときの沈んだ千鶴子は、帰ってからいよいよ自分と会うというときにも、一度は、あのときのような伏眼な瞼の影を湛えて考えるにちがいない...
横光利一 「旅愁」
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