...ちょうど鏡面(きょうめん)に映(うつ)っているのはこの島の海岸の市街(まち)であろう...
芥川龍之介 「不思議な島」
...そこへついたときには、ちょうど、八ぴきの鉄の人魚が海底におりたところでした...
江戸川乱歩 「海底の魔術師」
...後には『銀杏(いちょう)』という雑誌まで出して中々盛んなものであった...
高浜虚子 「漱石氏と私」
...小春はちょうど、人間の姿を備えて人間よりはずっと小さいあのフェアリーの一種で、それが肩衣(かたぎぬ)を着た文五郎の腕に留まっているのであった...
谷崎潤一郎 「蓼喰う虫」
...裏の森の銀杏樹(いちょう)も黄葉(もみじ)して夕の空を美しく彩(いろど)った...
田山花袋 「蒲団」
...こういう墓穴のような世界で難行苦行の六日を過ごした後に出て見た尾張町(おわりちょう)の夜の灯(ひ)は世にも美しく見えないわけに行かなかったであろう...
寺田寅彦 「銀座アルプス」
...ちょうど絵の中から思いがけもなく父の顔がのぞいているような気がして愕然(がくぜん)として驚いた...
寺田寅彦 「自画像」
...こころもち細めた左の眼はちょうど...
ドストエーフスキイ 中山省三郎訳 「カラマゾフの兄弟」
...周囲の人々が熱しきって、気狂(きちが)いじみているにかかわらず、この小坊主だけが、泣くにも泣かれない面色(かおいろ)を遠くから見ると、ちょうど、ところが千住の小塚原であるだけに、さながら屠所(としょ)の歩みのような小坊主の気色(けしき)を見ると、いかにも物哀れで、群集の熱狂がこれから何をやり出すのだか、心配に堪えられないことどもです...
中里介山 「大菩薩峠」
...達者だって何の楽しみもないじゃないか」浣腸(かんちょう)をしたのは作さんが来てから二...
夏目漱石 「こころ」
...ちょうど騒ぎが起ったと言うよ...
野村胡堂 「銭形平次捕物控」
...ちょうどいい都合とおっしゃると……」「俺の駕籠があいてるから...
久生十蘭 「顎十郎捕物帳」
...硝子のない窓々がちょうど眼鼻のように見える...
久生十蘭 「魔都」
...「なにか用があったら呼んでちょうだい」とおのぶが云った...
山本周五郎 「さぶ」
...あえて趙(ちょう)の国境を犯さなかったといいます...
吉川英治 「三国志」
...中にはさんでいく一挺(ちょう)の鎖駕籠(くさりかご)は――まさしく...
吉川英治 「神州天馬侠」
...能役者――桜間金五郎――紫紺の頭巾に銀杏笠(いちょうがさ)の女? ――それらを端的に頭の中でつづり合せながら...
吉川英治 「鳴門秘帖」
...ちょうど、村の十字架像の前で、彼は帽子を脱(ぬ)いだついでに、そいつを地べたに叩きつけ、足で踏みにじり、そして叫ぶ――「おれなんか、絶対に、誰も愛してくれやしない!」それと同時に、ルピック夫人が、しかもあのすばやい耳で、唇のへんに微笑を浮かべながら、塀の後(うし)ろから、物凄(ものすご)い顔を出した...
ルナアル Jules Renard 岸田国士訳 「にんじん」
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