...見るとひと叢(むら)の椿(つばき)の木かげに鵙屋家代々の墓が数基ならんでいるのであったが琴女の墓らしいものはそのあたりには見あたらなかった...
谷崎潤一郎 「春琴抄」
...むかし鵙屋家の娘(むすめ)にしかじかの人があったはずですがその人のはというとしばらく考えていて「それならあれにありますのがそれかも分りませぬ」と東側の急な坂路になっている段々の上へ連れて行く...
谷崎潤一郎 「春琴抄」
...伝によると「春琴の家は代々鵙屋安左衛門(やすざえもん)を称し...
谷崎潤一郎 「春琴抄」
...当時佐助は五つ六つの曲をどうやらこなすまでに仕上げていたので知っているだけを皆やってみよと云われるままに度胸を据(す)えて精限り根限り弾いた「黒髪(くろかみ)」のようなやさしいものや「茶音頭」のような難曲や素(もと)より何の順序もなく聞き噛(かじ)りで習ったのであるからいろいろのものを不規則に覚えていたのである鵙屋の家族は佐助が邪推(じゃすい)したように笑い草にする積りであったかも知れないが...
谷崎潤一郎 「春琴抄」
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谷崎潤一郎 「春琴抄」
...鵙屋夫婦は出来てしまったことは仕方がないしまあまあ佐助だったのはよかったそのくらいなら去年縁組(えんぐみ)をすすめた時なぜあのような心にもないことを云ったのやら娘気(むすめぎ)というものはたわいのないものと愁(うれ)いのうちにも安堵(あんど)の胸をさすり...
谷崎潤一郎 「春琴抄」
...私等よりも鳥の方がずっと大事にされていると云った○鵙屋(もずや)の家でも父の安左衛門が生存中は月々春琴の云うがままに仕送ったけれども父親が死んで兄が家督(かとく)を継いでからはそうそう云うなりにもならなかった...
谷崎潤一郎 「春琴抄」
...音曲指南(おんぎょくしなん)の看板にも鵙屋春琴の名の傍へ小さく温井(ぬくい)琴台の名を掲げていたが佐助の忠義と温順とはつとに近隣(きんりん)の同情を集め春琴時代よりかえって門下が賑(にぎ)わっていた滑稽(こっけい)な事は佐助が弟子に教えている間春琴は独り奥の間にいて鶯(うぐいす)の啼く音などに聞き惚(ほ)れていたが...
谷崎潤一郎 「春琴抄」
...竹を眺めつゝ尿してゐるちらほら家が見え出して鵙が鋭く今日の珍しい話は...
種田山頭火 「行乞記」
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内藤鳴雪 「鳴雪句集」
...何やら知らぬ小禽(ことり)の囀(さえず)りは秋晴の旦(あした)に聞く鵙(もず)よりも一層勢が好い...
永井荷風 「つゆのあとさき」
...心爲に動き即愚詠八首を以て之に答ふ(其六首を録す)津の國のはたてもよぎて往きし時播磨の海に君を追ひがてき淡路のや松尾が崎もふみ見ねば飾磨の海の家島も見ず飾磨の海よろふ群島つゝみある人にはよけむ君が家島冬の田に落穗を求め鴛鴦の來て遊ぶちふ家島なづかし家島はあやにこほしもわが郷は梢の鵙も人の獲るさとことしゆきて二たびゆかむ播磨路や家島見むはいつの日にあらむ女あり幼にして母を失ひ外戚の老婦の家に生長せり...
長塚節 「長塚節歌集 中」
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野口雨情 「枯草」
...是(これ)を鵙(もず)の速贄(はやにえ)とは云ふなり...
柳田國男 「野草雑記・野鳥雑記」
...今の声は……」「ケダモノじゃろか」「鳥じゃろか」「猿と人間と合の子のような……」「……春先に鵙(もず)は啼(な)かん筈じゃが……」皆...
夢野久作 「笑う唖女」
...鵙(もず)の啼きぬいている秋の日だった...
吉川英治 「黒田如水」
...あの鵙(もず)の画にもある気がある...
吉川英治 「随筆 宮本武蔵」
...つぐみや鵙(もず)が...
吉川英治 「宮本武蔵」
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