...物の饐(す)えた香と積肥(つみごえ)の香が擅(ほしいまま)にただよっていた...
有島武郎 「カインの末裔」
...それに違ひない、アノ洋服の色は、饐(す)えた、腐つた、溝の中の汚水の臭氣で那(あんな)に變色したのだ...
石川啄木 「菊池君」
...頭の痛くなるほど饐(す)えくさかった...
海野十三 「地軸作戦」
...もはやかうした宿らしく人間の汁液が浸込み饐(す)えた臭ひがこもつてゐるのや...
武田麟太郎 「釜ヶ崎」
...両側に積み上げられた陋(むさ)くるしい獣の檻(おり)……湿(じ)め湿めとした細長い土間……高い光も届かぬ天井……そして戸を閉め切った室内に殊に籠(こも)った獣特有の饐(す)えた臭い……まったくこの間どおりの陰惨さであった...
橘外男 「陰獣トリステサ」
...……饐えた飯をわざと食べる...
種田山頭火 「其中日記」
...切り口の饐えたソオセエジ……オリーヴ油はまださらさらと透明らしいが瓶一面の埃のためによくは見えない...
富永太郎 「大脳は厨房である」
...饐えた匂いなぞ、みじんもありはしない...
豊島与志雄 「小さき花にも」
...その他のあらゆる饐えた肉体へ...
豊島与志雄 「小さき花にも」
...饐(す)えたる菊はいたみたる...
萩原朔太郎 「月に吠える」
...御飯が饐(す)えないようにとて作った鉢であります...
柳宗悦 「手仕事の日本」
...而(こ)うした饐(す)えたような声で云うのである...
山本周五郎 「長屋天一坊」
...物の饐(す)えるような匂いが...
山本周五郎 「山彦乙女」
...饐(す)えたような臭いを室中(へやじゅう)に漂わしている...
夢野久作 「暗黒公使」
...世の節義は地に饐(す)えるであろう...
吉川英治 「三国志」
...饐(す)え朽ちた欄干を越え...
吉川英治 「新・水滸伝」
...その末期――ようやく饐(す)え飽かれて来たころの物語――時は現代から約八百余年前...
吉川英治 「随筆 新平家」
...かねてから饐(す)えていた国主の内輪揉(うちわも)めが...
吉川英治 「茶漬三略」
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