...ただいま除夜の鐘が鳴ります...
有島武郎 「或る女」
...すぐ最寄(もよ)りにある増上寺(ぞうじょうじ)の除夜の鐘が鳴り出した...
有島武郎 「或る女」
...除夜の鐘でも聞いてからになるのではないかと危ぶまれた...
武田麟太郎 「大凶の籤」
...男は国へ掃ってまず番頭を呼び、お金がもうこの家に無いというけれども、それは間違い、必ずそのような軽はずみの事を言ってはならぬ、暗闇(くらやみ)に鬼と言われた万屋の財産が、一年か二年でぐらつく事はない、お前は何も知らぬ、きょうから、わしが帳場に坐る、まあ、見ているがよい、と言って、ただちに店のつくりを改造して両替屋を営み、何もかも自分ひとりで夜も眠らず奔走すれば、さすがに万屋の信用は世間に重く、いまは一文無しとも知らず安心してここに金銀をあずける者が多く、あずかった金銀は右から左へ流用して、四方八方に手をまわし、内証を見すかされる事なく次第に大きい取引きをはじめて、三年後には、表むきだけではあるがとにかく、むかしの万屋の身代と変らぬくらいの勢いを取りもどし、来年こそは上方へのぼって、あの不人情の廓の者たちを思うさま恥ずかしめて無念をはらしてやりたいといさみ立って、その年の暮、取引きの支払いを首尾よく全部すませて、あとには一文の金も残らぬが、ここがかしこい商人の腕さ、商人は表向きの信用が第一、右から左と埒(らち)をあけて、内蔵はからっぽでも、この年の瀬さえしっぽを出さずに、やりくりをすませば、また来年から金銀のあずけ入れが呼ばなくってもさきを争って殺到します、長者とはこんなやりくりの上手な男の事です、と女房と番頭を前にして得意満面で言って、正月の飾り物を一つ三文で売りに来れば、そんな安い飾り物は小店に売りに行くものだよ、家を間違ったか、と大笑いして追い帰して、三文はおろか、わが家には現金一文も無いのをいまさらの如く思い知って内心ぞっとして、早く除夜の鐘が、と待つ間ほどなく、ごうん、と除夜の鐘、万金の重みで鳴り響き、思わずにっこりえびす顔になり、さあ、これでよし、女房、来年はまた上方へ連れて行くぞ、この二、三年、お前にも肩身の狭い思いをさせたが、どうだい、男の働きを見たか、惚(ほ)れ直せ、下戸(げこ)の建てたる蔵は無いと唄にもあるが、ま、心祝いに一ぱいやろうか、と除夜の鐘を聞きながら、ほっとして女房に酒の支度を言いつけた時、「ごめん...
太宰治 「新釈諸国噺」
...まだ除夜の鐘のさいちゅうだ...
太宰治 「新釈諸国噺」
...私はひとりしづかに読書しつつ除夜の鐘の鳴るのを待つた...
種田山頭火 「其中日記」
...百八は旧を送り新を迎うる除夜の鐘の数であるのも面白い...
徳冨健次郎 「みみずのたはこと」
...除夜の鐘鳴る頃雪歇みて益寒し...
断膓亭日記巻之四大正九年歳次庚申 「断腸亭日乗」
...除夜の鐘は暗い遠いい空で鳴る...
中原中也 「在りし日の歌」
...除夜の鐘は暗い遠いい空で鳴る...
中原中也 「在りし日の歌」
...十分ぐらい話をしていると除夜の鐘が鳴り...
久生十蘭 「魔都」
...それから明治神宮へ向ひ、十二時きっちりを車中で過す、除夜の鐘鳴らず...
古川緑波 「古川ロッパ昭和日記」
......
三好達治 「短歌集 日まはり」
...三〇)二五八八年の除夜の鐘が鳴っている...
山本周五郎 「青べか日記」
...除夜の鐘にのんびりと福茶を祝うと...
山本笑月 「明治世相百話」
...除夜の鐘はまだか」「はて...
吉川英治 「私本太平記」
...年々歳々の除夜の鐘には...
吉川英治 「随筆 新平家」
...もう除夜の鐘もすんで...
吉川英治 「宮本武蔵」
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