...銀魚(シャイナー)なんか鉤までとどかないうちにそこからひと御馳走いただいてしまうからね...
ソーロー Henry David Thoreau 神吉三郎訳 「森の生活――ウォールデン――」
...(胸算用(むねさんよう)、巻二の二、訛言(うそ)も只(ただ)は聞かぬ宿)遊興戒むかし上方(かみがた)の三粋人、吉郎兵衛(きちろべえ)、六右衛門(ろくえもん)、甚太夫(じんだゆう)とて、としは若(わか)し、家に金あり、親はあまし、男振りもまんざらでなし、しかも、話にならぬ阿呆(あほう)というわけでもなし、三人さそい合って遊び歩き、そのうちに、上方の遊びもどうも手ぬるく思われて来て、生き馬の目を抜くとかいう東国の荒っぽい遊びを風聞してあこがれ、或(あ)るとし秋風に吹かれて江戸へ旅立ち、途中、大笑いの急がぬ旅をつづけて、それにしても世の中に美人は無い、色が白ければ鼻が低く、眉(まゆ)があざやかだと思えば顎(あご)が短い、いっそこうなれば女に好かれるよりは、きらわれたい、何とかして思い切りむごく振られてみたいものさ、などと天を恐れぬ雑言(ぞうごん)を吐き散らして江戸へ着き、あちらこちらと遊び廻(まわ)ってみても、別段、馬の目を抜く殺伐なけしきは見当らず、やはりこの江戸の土地も金次第、どこへ行っても下にも置かずもてなされ、甚(はなは)だ拍子抜けがして、江戸にもこわいもの無し、どこかに凄(すご)い魔性のものはいないか、と懐手(ふところで)して三人、つまらなそうな様子で、上野黒門(くろもん)より池(いけ)の端(はた)のほうへぶらりぶらり歩いて、しんちゅう屋の市右衛門(いちえもん)とて当時有名な金魚屋の店先にふと足をとどめ、中庭を覗(のぞ)けば綺麗(きれい)な生簀(いけす)が整然と七、八十もならび、一つ一つの生簀には清水が流れて水底には緑の藻(も)がそよぎ、金魚、銀魚、藻をくぐり抜けて鱗(うろこ)を光らせ、中には尾鰭(おひれ)の長さ五寸以上のものもあり、生意気な三粋人も、その見事さには無邪気に眼(め)を丸くして驚き、日本一の美人をここで見つけたと騒ぎ、なおも見ていると、その金魚を五両、十両の馬鹿(ばか)高い値段で、少しも値切らず平気で買って行く人が次々とあるので、やっぱり江戸は違う、上方には無い事だ、あの十両の金魚は大名の若様のおもちゃであろうか、三日養って猫(ねこ)に食われてそれでも格別くやしそうな顔もせずまたこの店へ来て買うのであろうな、いかさま武蔵野(むさしの)は広い、はじめて江戸を見直したわい、などと口々に勝手な事を言って単純に興奮し、これを見ただけでも江戸へ来たかいがあった、上方へのよい土産話が出来た、と互いによろこび首肯(うなず)き合っているところへ、賤(いや)しい身なりの小男が、小桶(こおけ)に玉網(たも)を持ち添えてちょこちょこと店へやって来て、金魚屋の番頭にやたらにお辞儀をしてお追従(ついしょう)笑いなどしている...
太宰治 「新釈諸国噺」
...金魚銀魚が鉢に入れて出してあったが...
ディッケンス Dickens 森田草平訳 「クリスマス・カロル」
...麦穂のような緑色や宝石のような青色をした白銀魚の群が...
ロマン・ローラン Romain Rolland 豊島与志雄訳 「ジャン・クリストフ」
...黒縞(くろしま)と赤斑点(あかはんてん)の美しい銀魚は鮭(サケ)のよう...
フレッド・M・ホワイト Fred M. White 奥増夫訳 「幽霊島」
便利!手書き漢字入力検索
この漢字は何でしょう??