...『秋の聲まづ逸早く耳に入るかゝる性(さが)有(も)つ悲むべかり』澁民村に秋風が見舞つた...
石川啄木 「鳥影」
...其時大きな地震があつて水月は逸早く跣足のまゝ庭に飛び下りた...
高濱虚子 「俳諧師」
...黄成鎬は逸早く懐中からトランプを取り出して床に撒き散らしている...
林不忘 「安重根」
...諾威(ノウルエー)産のD氏はそれらを尻目に逸早く自己の欲するものを発見し...
谷譲次 「踊る地平線」
...ナタリイは逸早く逃げ出していた...
谷譲次 「踊る地平線」
...自分は逸早く溝をとび越して...
田畑修一郎 「医師高間房一氏」
...逸早く誰かに拾はれて了つたと見えて...
田山録弥 「父親」
...夕陽新聞は他社に先んじて逸早くこの事実を報じ...
久生十蘭 「魔都」
...そして逸早く亭主の両手と...
ニコライ・ゴーゴリ Nikolai Vasilievitch Gogoli 平井肇訳 「ディカーニカ近郷夜話 後篇」
...洋裝婦人連の素姓を逸早く見拔いたらしかつた...
牧野信一 「痴日」
...その話は逸早く一九が六阿彌陀詣の中に取入れて居ります...
三田村鳶魚 「物貰ひの話」
...逸早く彼女は扉の覗き硝子の方に近づいた...
室生犀星 「はるあはれ」
...そして、謙信はといえば、そこへ逸早く、鬼小島弥太郎が、拾い馬の口輪(くちわ)をつかんで曳き寄せて来たので、その背へ跳び乗るが早いか一鞭加えて、「返せ...
吉川英治 「上杉謙信」
...ひとりは逸早く手ぬぐいを取って猿轡(ぐつわ)をかける...
吉川英治 「江戸三国志」
...――喩(たと)えば、徳川内府の如き老獪(ろうかい)に、われらは天下を渡すわけには参らぬ! 秀頼公をさしおいて、のめのめと、内府の思うつぼへ天下を差し出して、何と、故太閤殿下へ、あの世で会わす面(かんばせ)があるか」「では――どう召さる心底な?」「時は、今だと思う」「今?」「直江山城が、北国東国に拠(よ)って、内府へ加担の軍を、遠く寄せつけているこの秋(とき)に、秀頼公の御教書を乞い、西に毛利、島津を起たせ」「待たれい」刑部は、三成の語気を、こう鎮(しず)めて、「お身は、山城と、逸早く、脈を引いておられたな...
吉川英治 「大谷刑部」
...そこには、信長の嫡子(ちゃくし)信忠の遺子三法師(ぼうし)丸(まる)がいる関係上、自然、安土以後の織田家の中心がそこに移されたかのような観をなしていたためであるが、勝家には、そのこともまた、何か逸早く、秀吉が僭越(せんえつ)な音頭(おんど)を取って事態をうごかしているように邪推(じゃすい)された...
吉川英治 「新書太閤記」
...逸早く返書をよこして...
吉川英治 「源頼朝」
...折柄勃発した支那事変に鑑み逸早く紙面を引締め...
蘭郁二郎 「休刊的終刊」
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