...しかし、民衆だって、ずるくて汚くて慾が深くて、裏切って、ろくでも無いのが多いのだから、謂(い)わばアイコとでも申すべきで、むしろ役人のほうは、その大半、幼にして学を好み、長ずるに及んで立志出郷、もっぱら六法全書の糞(くそ)暗記に努め、質素倹約、友人にケチと言われても馬耳東風、祖先を敬するの念厚く、亡父の命日にはお墓の掃除などして、大学の卒業証書は金色の額縁にいれて母の寝間の壁に飾り、まことにこれ父母に孝、兄弟には友ならず、朋友(ほうゆう)は相信ぜず、お役所に勤めても、ただもうわが身分の大過無きを期し、ひとを憎まず愛さず、にこりともせず、ひたすら公平、紳士の亀鑑、立派、立派、すこしは威張ったって、かまわない、と私は世の所謂お役人に同情さえしていたのである...
太宰治 「家庭の幸福」
...さればとて舊主を裏切っては武士の一分(いちぶん)がすたれることを慮(おもんぱか)って...
谷崎潤一郎 「聞書抄」
...あとの四人は他人だ」「その鬼頭の叔父がお祖父(じい)さんを裏切って敵に廻った...
野村胡堂 「九つの鍵」
...平次の警戒を裏切って...
野村胡堂 「銭形平次捕物控」
...門人中に裏切ってつとにこの連動を席亭側へ知らせたものがあり...
正岡容 「圓朝花火」
...これはまさに自己の主義を日常の経験がかくも残酷に裏切っているのになおこれに忠実な人物の特異の一例である...
トマス・ロバト・マルサス Thomas Robert Malthus 吉田秀夫訳 「人口論」
...最大級の愛撫(あいぶ)を加えていた自分を裏切っておしまいになるようなことと...
紫式部 與謝野晶子訳 「源氏物語」
...わが自叙伝を裏切ってはならないぞと考える...
ミシェル・エーケム・ド・モンテーニュ Michel Eyquem de Montaigne 関根秀雄訳 「モンテーニュ随想録」
...自然が彼らの額に植えつけた約束を裏切っているやつを...
ミシェル・エーケム・ド・モンテーニュ Michel Eyquem de Montaigne 関根秀雄訳 「モンテーニュ随想録」
...悪魔式の表現を片っ端から裏切っているのであります...
夢野久作 「鼻の表現」
...別れの際の表情を裏切っているものでもなかった...
横光利一 「旅愁」
...もし徐庶がご信頼を裏切って...
吉川英治 「三国志」
...呉を裏切って馬忠の首を咥(くわ)え来る...
吉川英治 「三国志」
...死を一つに約した友を裏切って...
吉川英治 「新書太閤記」
...御主人を裏切って...
吉川英治 「日本名婦伝」
...彼の最後の感傷を裏切って...
蘭郁二郎 「自殺」
...Y海岸への散歩であろうと思っていた彼の予想を裏切って...
蘭郁二郎 「鱗粉」
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