...ただ一面の茫漠とした沼地であった...
伊藤野枝 「転機」
...この茫漠とした捉(つか)みがたい世の中でやはり捉みがたい者としてしか現れない数しれない人達...
田畑修一郎 「医師高間房一氏」
...茫漠とした行手を見てゐたのだらう...
田畑修一郎 「医師高間房一氏」
...または茫漠としたような...
チェスタートン Chesterton 直木三十五訳 「秘密の庭」
...シベリヤの茫漠とした地圖のうちには...
徳永直 「光をかかぐる人々」
...これは素晴しい」茫漠とした感情の中から...
外村繁 「澪標」
...またその棋理も茫漠としていた...
豊島与志雄 「三木清を憶う」
...ところで、空寂と、沈静と、茫漠と、暗黒と、孤独とは、形の通りで、弁信なればこそ、仔細らしく耳を傾けて何物をか聞き取ろうと構えているように見えるものの、余人であってみれば、聞き取るべき一言もなく、澄まし込むべき四方(あたり)の混濁(こんだく)というものの全然ない世界ですから、もし弁信の耳が、この間から何物をか聞き得たとすれば、それは彼の耳の中からおのずから起ってくる雑音を、彼自身が、自己妄想的に聞き操っているに過ぎないので、この点は、かの清澄の茂太郎が、反芻的(はんすうてき)に即興の歌をうたうのと同じことなのであります...
中里介山 「大菩薩峠」
...茫漠とした空間の中に吹き拂はれてしまつたやうに思はれた...
ブロンテイ 十一谷義三郎訳 「ジエィン・エア」
...茫漠とした武蔵野の煙つたやうな美しさも望まれた...
北條民雄 「間木老人」
...すると同時に私は(これも私の熱の作用のせゐだつたのかしら?)ふしぎに茫漠とした...
堀辰雄 「水のほとり」
...そんなことは大変茫漠とした謎のやうな気がして...
牧野信一 「渚」
...あとは一瞬時前と同様茫漠とした白い幻がフワフワと漂ふてゐるばかりで...
牧野信一 「妄想患者」
...茫漠と捉えどころのないおんなのいないおんなの考えに出会した...
室生犀星 「われはうたえども やぶれかぶれ」
...相当茫漠としているし...
ミシェル・エーケム・ド・モンテーニュ Michel Eyquem de Montaigne 関根秀雄訳 「モンテーニュ随想録」
...明るく澄んだ茫漠とした視野の中に私をつつんでいた...
山川方夫 「博士の目」
...やさしく茫漠としたあのひろがり...
山川方夫 「博士の目」
...銀太と金太が一人の茫漠として泰然たる青年を...
山本周五郎 「長屋天一坊」
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