...彼女にくらべると私は実に茫漠として濁つてゐる事を感じた...
高村光太郎 「智恵子抄」
...茫漠とした行手を見てゐたのだらう...
田畑修一郎 「医師高間房一氏」
...あまりに茫漠とした...
田山録弥 「墓の上に墓」
...何かしら、茫漠としている...
豊島与志雄 「傷痕の背景」
...ただその前後は茫漠として少しも見分けがつかなかった...
豊島与志雄 「蘇生」
...その先は茫漠と暮れかけていました...
豊島与志雄 「高尾ざんげ」
...またその棋理も茫漠としていた...
豊島与志雄 「三木清を憶う」
...とらへどころなく茫漠としてゐる...
林芙美子 「瀑布」
...潮鳴りの音を聞いたか!茫漠と拡った海の叫喚を聞いたか!煤けたランプの灯を女房達に託して島の職工達は磯の小石を蹴散し夕焼けた浜辺へ集った...
林芙美子 「放浪記(初出)」
...それが葵のこころを茫漠とした悲しみのなかへひきいれるのだった...
久生十蘭 「金狼」
...御身のうちにあるものは凡て茫漠として平板である...
ニコライ・ゴーゴリ Nikolai Vasilievitch Gogolj(Николай Васильевич Гоголь) 平井肇訳 「死せる魂」
...茫漠とした風は終日南の方から強く吹きつけてゐたのである...
ブロンテイ 十一谷義三郎訳 「ジエィン・エア」
...茫漠と煙った海原に降り注いでいる太陽の明るさなどを見ていると...
北條民雄 「いのちの初夜」
...茫漠と頭の意識が煙つて了つたのである...
牧野信一 「痴想」
...そんなことは大変茫漠とした謎のやうな気がして...
牧野信一 「渚」
...あとは一瞬時前と同様茫漠とした白い幻がフワフワと漂ふてゐるばかりで...
牧野信一 「妄想患者」
...老人の話は茫漠として取止めのない断片であって...
山本周五郎 「麦藁帽子」
...どこか茫漠としたあの面つき...
吉川英治 「私本太平記」
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