...ただ一面の茫漠とした沼地であった...
伊藤野枝 「転機」
...彼女にくらべると私は実に茫漠として濁つてゐる事を感じた...
高村光太郎 「智恵子抄」
...茫漠とした行手を見てゐたのだらう...
田畑修一郎 「医師高間房一氏」
...これは素晴しい」茫漠とした感情の中から...
外村繁 「澪標」
...ただその前後は茫漠として少しも見分けがつかなかった...
豊島与志雄 「蘇生」
...茫漠とした世の中への望みが...
直木三十五 「南国太平記」
...ところで、空寂と、沈静と、茫漠と、暗黒と、孤独とは、形の通りで、弁信なればこそ、仔細らしく耳を傾けて何物をか聞き取ろうと構えているように見えるものの、余人であってみれば、聞き取るべき一言もなく、澄まし込むべき四方(あたり)の混濁(こんだく)というものの全然ない世界ですから、もし弁信の耳が、この間から何物をか聞き得たとすれば、それは彼の耳の中からおのずから起ってくる雑音を、彼自身が、自己妄想的に聞き操っているに過ぎないので、この点は、かの清澄の茂太郎が、反芻的(はんすうてき)に即興の歌をうたうのと同じことなのであります...
中里介山 「大菩薩峠」
...とらへどころなく茫漠としてゐる...
林芙美子 「瀑布」
...茫漠とした廊下の突当りの教室に灯が洩れてゐる...
原民喜 「魔のひととき」
...百万劫の静寂のなかに茫漠とひろがっている...
久生十蘭 「南極記」
...砂丘まじりの地表が茫漠とひろがり...
久生十蘭 「ボニン島物語」
...茫漠とした空間の中に吹き拂はれてしまつたやうに思はれた...
ブロンテイ 十一谷義三郎訳 「ジエィン・エア」
...茫漠と煙った海原に降り注いでいる太陽の明るさなどを見ていると...
北條民雄 「いのちの初夜」
...茫漠とした武蔵野の煙つたやうな美しさも望まれた...
北條民雄 「間木老人」
...茫漠と頭の意識が煙つて了つたのである...
牧野信一 「痴想」
...やさしく茫漠としたあのひろがり...
山川方夫 「博士の目」
...それも極めて茫漠としてゐるのに...
吉川英治 「折々の記」
...どこか茫漠としたあの面つき...
吉川英治 「私本太平記」
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