...彼の唇の上へいつか捺(なす)つて行つた翅の粉だけは数年後にもまだきらめいてゐた...
芥川龍之介 「或阿呆の一生」
...一層翅音を高くしながら...
芥川龍之介 「老いたる素戔嗚尊」
...その音は蠅が翅をバタ/\さしてゐる音だつたんです...
アンリイ・ファブル Jean-Henri Fabre 大杉栄、伊藤野枝訳 「科学の不思議」
...その翅からは戦慄(せんりつ)すべき殺人音波が発射され...
海野十三 「蠅」
...よく走る鳥は翅(はね)が小さい...
丘浅次郎 「自然界の虚偽」
...翅の透明な、胸や腹の緑と黒の模様のおもしろい、彫刻に作っては派手なセミである...
高村光太郎 「蝉の美と造型」
...片翅をもいでから掌にのせて前に出した...
中島敦 「かめれおん日記」
...何だかありもしない翅(つばさ)を生(は)やして飛んでる人のような...
夏目漱石 「処女作追懐談」
...翅(つばさ)があつても飛び越せさうもありません...
野村胡堂 「錢形平次捕物控」
...足をもて一歩退き翅もて百里を進むわりなさか是れ自分には人の持たぬ翅がある...
平野萬里 「晶子鑑賞」
...あの透明(とうめい)な翅(はね)をした蛾(が)になるのかと想像すると...
堀辰雄 「美しい村」
...去年の甲虫や玉虫やそして膜翅(ハチ)の類ひを完全な一箱にして...
牧野信一 「魚籃坂にて」
...翅をひろげて見れば...
牧野信一 「冬日抄」
...見霞すむ稲田の上に眼を放つと蜻蛉の群がさんさんたる陽りに翅を翻して游泳してゐるのだ...
牧野信一 「ベツコウ蜂」
...またもや翅に鞭を加へたかと見ると脚の自由を奮ひ返して...
牧野信一 「ベツコウ蜂」
...難陀等十六竜王のみ金翅鳥に啖われずとある...
南方熊楠 「十二支考」
...翅の薄い、体の軟い弱い蝶々は幾万とかたまって空を覆って飛び、疲れると波の上にみんなで浮いて休み、また飛び立って旅をつづけ、よく統制がとれて殆ど落伍するものなく移動を成就するのだそうである...
宮本百合子 「結集」
...セルロイドの翅(はね)と悪鬼のような角があり...
ルナール Jules Renard 岸田国士訳 「博物誌」
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