...時しも、鬱金(うこん)木綿が薄よごれて、しなびた包、おちへ来て一霜(ひとしも)くらった、大角豆(ささげ)のようなのを嬉しそうに開けて、一粒々々、根附だ、玉だ、緒〆(おじめ)だと、むかしから伝われば、道楽でためた秘蔵の小まものを並べて楽しむ処へ――それ、しも手から、しゃっぽで、袴(はかま)で、代書代言伊作氏が縁台の端へ顕(あら)われるのを見ると、そりゃ、そりゃ矢藤さんがおいでになったと、慌(あわただ)しく鬱金木綿を臍(へそ)でかくす……他なし、書画骨董の大方を、野分のごとく、この長男に吹さらわれて、わずかに痩莢(やせざや)の豆ばかりここに残った所以(ゆえん)である...
泉鏡花 「開扉一妖帖」
...額や鼻先から玉のような汗が一粒々々にじみ出たので...
魯迅 井上紅梅訳 「明日」
...急にその粒々が殖えて来た...
梅崎春生 「幻化」
...庭の紅梅の粒々の蕾(つぼみ)は...
太宰治 「彼は昔の彼ならず」
...今朝は嫌な事と嬉しい事とがあつた、その二つを相殺しても、まだまだ嬉しさが余りあつた、――といふのは、起きてすぐ前の畠に尿して道を横ぎらうとするところへ、まご/″\走る自動車がやつてきた、彼は巡査だつた、私が尿したのを見たのだらう、そして恐らくは自分のまご/″\を隠すためだらう、そこへ小便してはいかんぢやないか、といひ捨てゝいつた、私は無論何とも答へなかつた、そして彼の没常識を憐んだ、私などはなるたけ小言をいひたくないのに、彼はなるたけ小言がいひたいのだ、とうてい部長にもなれない彼だ、なぜ彼等はあんなにこせ/\するのだらう、――嬉しい事といふのは、郷里の妹からたよりがあつたのだ、ゲルトも送つてくれたし、着物も送つてくれた、私はさつそくその着物をつけて、そのゲルトで買物しい/\歩いた、あゝ何といふ肉縁のあたゝかさだらう!米を買つた、一升拾六銭だ、米はほんたうに安い、安すぎる、粒々辛苦、そして損々不足などゝ考へざるをえないではないか...
種田山頭火 「行乞記」
...粒々辛苦実である...
種田山頭火 「其中日記」
...粒々たる工夫に充ちた併しあまりに非凡ではない処の筆なのである...
戸坂潤 「思想としての文学」
...その粒々たる苦心の結晶が...
戸坂潤 「社会時評」
...農夫が粒々辛苦する以上の辛苦であった...
永井隆 「ロザリオの鎖」
...な勇」「細工は粒々さ...
野村胡堂 「笑う悪魔」
...一ツ二ツ三ツ四ツ玉蜀黍の粒々は...
林芙美子 「新版 放浪記」
...ぞうげ色の粒々が行列して出て来る...
林芙美子 「新版 放浪記」
...せんだんの木には黄色い粒々の實がなつてゐる...
林芙美子 「旅人」
...粒々錢々皆是れ國民の膏血なるぞ...
福沢諭吉 「帝室論」
...底の粒々に一つずつふれてゆくように...
宮本百合子 「獄中への手紙」
...(これは佐藤さん)それから栄さんの可愛い赤い粒々輝く梅もどきと白菊...
宮本百合子 「獄中への手紙」
......
山之口貘 「鮪に鰯」
...細工は粒々(りゅうりゅう)仕上げを御覧(ごろう)じです」しかし私があの廃屋の中で聞いたお話は...
夢野久作 「少女地獄」
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