...最初の弱い胃袋に必要な濃さにして用意したものがある...
アンリイ・ファブル Jean-Henri Fabre 大杉栄、伊藤野枝訳 「科学の不思議」
...それが一杯の濃さになつた食料だ...
アンリイ・ファブル Jean-Henri Fabre 大杉栄、伊藤野枝訳 「科学の不思議」
...火星の空気の濃さは地球で一番高いといわれる標高八千八百八十二メートルのエベレスト峯頂上の空気よりももっと稀薄(きはく)であろうといわれていた...
海野十三 「火星探険」
...その虹はあざやかに色彩の濃さを増して来て...
太宰治 「斜陽」
...なにしろ今から四十何年の昔のことでござりましてそのころは京や大阪の旧家などでは上女中(かみじょちゅう)には御守殿(ごしゅでん)風の姿をさせ礼儀作法は申すまでもござりませぬが物好きな主人になりますと遊芸などをならわせたものでござりますから、このやしきもいずれそういう物持の別荘なのであの琴をひいた女はこの家の御寮人(ごりょうにん)でござりましょう、しかしその人は座敷のいちばん奥の方にすわっておりまして生憎(あいにく)とすすきや萩のいけてあるかげのところに(かお)がかくれておりますのでわたくしどもの方からはその人柄が見えにくいのでござりました、父はどうかしてもっとよく見ようとしているらしく生垣に沿うてうろうろしながら場所をあっちこっち取りかえたりしましたけれどもどうしても生け花が邪魔になるような位置にあるのでござります、が、髪のかっこう、化粧の濃さ、着物の色あいなどから判じてまだそれほどの年の人とは思われないのでござりまして、殊(こと)にその声のかんじが若うござりました、だいぶん隔たっておりましたから何を話しているのやら意味はきき取れませなんだがその人のこえばかりがきわだってよく徹(とお)りまして、「そうかいなあ」とか「そうでっしゃろなあ」とか大阪言葉でいっている語尾だけが庭の方へこだましてまいりますので、はんなりとした、余情に富んだ、それでいてりんりんとひびきわたるようなこえでござりました、そしていくらか酔っているとみえましてあいまあいまにころころと笑いますのが花やかなうちに品があって無邪気にきこえます、「お父さん、あの人たちはお月見をして遊んでいるんですね」とそういってみますと「うん、そうらしいね」といって父はあいかわらずその垣根のところへ顔をつけております、「だけど、ここは誰の家なんでしょう、お父さんは知っているのですか」とわたくしはまたかさねてそういってみましたけれど今度は「ふむ」と申しましたきりすっかりそちらへ気を取られて熱心にのぞいているのでござります、それがいまから考えましてもよほど長い時間だったのでござりましてわたくしどもがそうしておりまするあいだに女中が蝋燭(ろうそく)のしんを剪(き)りに二度も三度も立っていきましたし、まだそのあとで舞いがもう一番ござりましたし、女あるじの人がひとりでうつくしいこえをはりあげて琴をひきながら唄(うた)をうたうのをききました、それからやがて宴会がすんでその人たちが座敷を引きあげてしまうまで見ておりましてかえりみちにはまたとぼとぼと堤の上をあるかせられたのでござります、尤(もっと)もこういう風に申しますとそんなおさない時分のことを非常にくわしくおぼえているようでござりますがじつは先刻も申し上げましたようなしだいでそのとしだけのことではないのでござります、そのあくる年もそのあくる年も十五夜の晩にはきっとあの堤をあるかせられてあの池のほとりの邸(やしき)の門前で立ちどまりますと琴や三味せんがきこえてまいります、すると父とわたくしとは塀を廻って生垣の方から庭をのぞくのでござります、座敷のありさまも毎年たいがい同じようでござりましていつもあの女あるじらしい人が芸人や腰元をあつめて月見の宴を催しながら興じているのでござりました、でござりますから最初のとしに見ましたこととその次々のとしに見ましたこととがややこしくなっておりますけれどもいつのとしでもだいたい只今(ただいま)お話したようなふうだったのでござります...
谷崎潤一郎 「蘆刈」
...小座敷の暗さと濃さが違う...
谷崎潤一郎 「陰翳礼讃」
...雨雲が氷雲にかわって雲の色と濃さとが...
中谷宇吉郎 「雨を降らす話」
...もっとも色の濃さからいえば...
中谷宇吉郎 「真夏の日本海」
...化粧の濃さが気になります...
野村胡堂 「銭形平次捕物控」
...白粉の厚さ、口紅の濃さ、闇を染めるやうな甘つたるい言葉、背がスラリとして、身のこなしの線がなよ/\として、世にも惱ましき存在ですが、野狐が化けたのではないことは、五音(いん)の調子にも明かです...
野村胡堂 「錢形平次捕物控」
...外にも叔父を怨んでゐる者は二人や三人はあるんだから、誰がやつたかわからないが、お玉さんだつて、此節の樣子では、親位殺し兼ねませんよ」「お玉は何を怨(うら)んで居るのだ」「好きな男と一緒にしてくれないばかりでなく、隣の方を向いた窓まで、皆んな釘付けにするやうぢや、お玉さんどんなに人間が素直でも、親を怨み度くもなりますよ」「ところで、變なことを訊くが、お前は久米野の家で下女代りにコキ使はれて居ると言つたが、それで腹の底から諦めて居るだらうな」「――」「口のきゝやう、化粧の濃さ、お前は只の素人ぢや無いやうだ...
野村胡堂 「錢形平次捕物控」
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長谷川時雨 「九条武子」
...いかに無頼でもそこは血の濃さ...
久生十蘭 「顎十郎捕物帳」
...晴れると、日ごとに、空も、海も、青の濃さを増す...
火野葦平 「花と龍」
...もしまた紫ならば同じ濃さか同じ古さか...
正岡子規 「墨汁一滴」
...五月十五日家のぐるりの若葉の緑が一層濃さをましました...
宮本百合子 「獄中への手紙」
...まつ毛の濃さも目化粧(めげしょう)したほどきわ立って...
吉川英治 「江戸三国志」
...その真情の濃さ...
吉川英治 「三国志」
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