...斷えず流行の假聲を使ふことによつて漸く文壇を泳いで行く「游泳者」とを見た...
阿部次郎 「三太郎の日記 第一」
...思ひ切つて、蝸牛の這ふやうにして、漸く過ぐ...
大町桂月 「鹽原新七不思議」
...鶴の影は漸く小さく...
薄田泣菫 「独楽園」
...私は漸く妹の病苦よりも金銭を先に云う彼が憎くなってきた...
「草藪」
...宜しい自分で遣らう」と斯う決心すると漸く心が落著き始めた...
高濱虚子 「續俳諧師」
...漸く馴れるに随って信一の我が儘は益つのり...
谷崎潤一郎 「少年」
...此頃漸くその理由がわかつて来た...
田山録弥 「脱却の工夫」
...閣下の内閣も亦漸く威信を失ふの挙措に出でたること少なからず...
鳥谷部春汀 「明治人物月旦(抄)」
...今や漸く多数の認識するの所となれりと雖も...
鳥谷部春汀 「明治人物月旦(抄)」
...窓は漸く外光を取入れるだけのものである...
豊島与志雄 「北京・青島・村落」
...火事場歸りの人足が漸く疎(まば)らになつて...
野村胡堂 「錢形平次捕物控」
...死骸を動かさなかつたのか」八五郎は漸く勇氣を取戻しました...
野村胡堂 「錢形平次捕物控」
...声が漸く本調子出始め気持よく...
古川緑波 「古川ロッパ昭和日記」
...漸くチョン五時すぎ...
古川緑波 「古川ロッパ昭和日記」
...(漸くそこ迄漕ぎつけたか!)斯う思ふと彼は...
牧野信一 「眠い一日」
...医院を開いてゐた隆造の叔父が発狂して、それも他所目にはさうとも見られる程でもなかつたが職業柄もあつたし、家内の者達への狂暴は募るばかりで「酒癖が悪い」位ゐでは包み終せなくなつて、漸くのこと、三月ばかり前にS癲狂院へ入院させて以来――毎晩のやうに同じやうな叔母の愚痴話の相手になつて、隆造は夜を更さなければならなかつた...
牧野信一 「白明」
...一刻前漸く歌らしい言葉の連りが口のうちに纏りかゝつたのを...
牧野信一 「晩春の健康」
...途中で松火を點して來る女にあつて漸く西洞へ來た事が判明つた...
吉江喬松 「山岳美觀」
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