...ポツンと赤い血の滴りが滾(こぼ)れているではないか...
海野十三 「棺桶の花嫁」
...僅かこればかりの滾(こぼ)れ残ったような金貨だの宝石なのでしょうか」と大江山課長は不審(ふしん)げに云った...
海野十三 「恐怖の口笛」
...インキがたらたら畳のうえにまで滾(こぼ)れた...
徳田秋声 「仮装人物」
...ずっと深いところから滾滾(こんこん)と湧いて来る感じである...
外村繁 「澪標」
...洗張屋は庭の短い青草に水を滾しながら引つ張つた布を刷毛でこすつて居る...
長塚節 「開業醫」
...爺(ぢい)が膳(ぜん)さかうだに滾(こぼ)して」と彼(かれ)は先刻(さつき)よりも低(ひく)い聲(こゑ)で「おとつゝあに見(み)らつたら怒(おこ)られつから」斯(か)ういつて又(また)「汝(わ)ツ等(ら)おとつゝあは怒(おこ)りつ坊(ぽ)だから」と沈(しづ)んで呟(つぶや)くやうにいつた...
長塚節 「土」
...したゝか蝋涙(らふるゐ)が滾(こぼ)れてゐるだけ...
野村胡堂 「錢形平次捕物控」
...あの汲めども汲めども盡きずに滾々と涌きあがつてくるやうな詩句の豐かさは...
堀辰雄 「「古代感愛集」讀後」
...この時は震えて涙を滾した...
牧野信一 「淡雪」
...滾れるのが不思議ぢやないか...
牧野信一 「「悪」の同意語」
...北側の崖下に流れ出てゐる鉛筆ほどの細さの筧の水が滾れ落ちてゐるのみで...
牧野信一 「その村を憶ひて」
...「キヤンプならキヤンプで好いが――」と不平を滾した者があつた...
牧野信一 「断唱」
...私の脣に冷い月の雫が滾れる...
牧野信一 「痴想」
...その時叔父の頬にポロ/\と涙が滾れてゐるのを見て...
牧野信一 「白明」
...歓喜の涙が滾れさうだつた...
牧野信一 「まぼろし」
...滾々(こんこん)として流れている大きい水の方へ進んだのである...
シュミットボン Willhelm Schmidt-Bonn 森鴎外訳 「鴉」
...それより他の言葉が出ぬほどな感激に昂(たかぶ)らされてぼろぼろと涙を滾(こぼ)した...
吉川英治 「剣難女難」
...滾々(こんこん)とあふれる神泉をもう一柄杓(ひとひしゃく)掬(すく)って...
吉川英治 「新書太閤記」
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