...鹿野山は淡く横はる...
大町桂月 「千葉夜行記」
...暮色の中に淡く見えて...
大町桂月 「箱根神社祈願の記」
...行き交ふ人は寒さと雪に景氣をつけられて興奮して通る雪は濃厚の空氣の中に風が無いので一直線に降りて來る一緒にかたまつて降つたり一片一片妙にゆつくりと重たい空氣にのつかつて落ちて來る顏を目がけて飛んで來て眞直ぐに足下へ落ちて消えてゆく降つても降つても往來ではぬかるみへ靜かに消えてゆく、輕く、淡く、重く鼻の先や眼の先きを見えたり隱れたりし乍ら人々の行き交ふ中に降つて來る...
千家元麿 「自分は見た」
...紫に淡く霞(かす)んでいるのは...
橘外男 「墓が呼んでいる」
...多景島は青螺(せいら)の如く淡く霞み...
近松秋江 「湖光島影」
...あとに残されるものは淡くはかない夏の宵闇(よいやみ)である...
寺田寅彦 「備忘録」
...其処には淡く煙った冬の日の明るみと...
豊島与志雄 「蠱惑」
...ランプの光は淡くなって...
ユゴー・ヴィクトル Hugo Victor 豊島与志雄訳 「死刑囚最後の日」
...地等にそれぞれ淡く軟(やわら)かき色を施し以て画面に一種の情調を帯ばしめたり...
永井荷風 「江戸芸術論」
...梢からは天の川が悠然たる淡路島へ淡く落ち込んで居る...
長塚節 「須磨明石」
...わく水の淡くたゝへて...
長塚節 「長塚節歌集 上」
...墨が淡くなると墨色の差が素人にも大変分りやすくなるので...
中谷宇吉郎 「墨色」
...一人は太古(たいこ)からかれない泥沼の底の主、山椒(さんせう)の魚(うを)でありたいといひ、ひとりは、夕暮、または曉に、淡く、ほの白い、小さな水藻(みづも)の花(はな)でありたいと言ふ、こんな二人...
長谷川時雨 「こんな二人」
...あのすき透つた青い眼を見てゐると淡く無限な淋しみに誘はれる...
牧野信一 「籔のほとり」
...極めて淡く見過してゐた...
正宗白鳥 「入江のほとり」
...高館に登りて見れば小糠雨烟りて寒く朽ちかけし家のほとりの高き木に鳴く蝉かなし苔かほる古き木に倚りその昔の人をしのべど木々に吹く風も寂しく消えて行く思ひ儚し遠山の淡くけむりて北上は北の果よりその昔の夢を語らずうね/\とうねりて流る故郷を遠くはなれて旅に見る夢跡かなし生ひ繁る草木の緑高館に吹く風寒し...
森川義信 「高館」
...残燈の光淡く、浅ましい寝すがたに明滅している...
吉川英治 「三国志」
...片側の崖の森から往来へ淡く立ちこめていた...
吉川英治 「新編忠臣蔵」
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