...瓦灯(がとう)が淡くまたたいている...
安西冬衛 「大阪の朝」
...淡く清く装った得意の人を馬に乗せて市(いち)を練って...
泉鏡花 「海神別荘」
...昼の名残(なごり)の光がだんだん淡くなってまったく消えてしまうと...
スティーブンソン Stevenson Robert Louis 佐々木直次郎訳 「宝島」
...薄い煙が提燈を掠(かす)めて淡く靡いている...
田山花袋 「一兵卒」
...窓際に凭(よ)つて矢張名残惜さうにこちらを見てゐる所長の顔に午後の日影の淡くさしてゐるのにも...
田山録弥 「モウタアの輪」
...南を指して流るゝ雲、渦(うず)まく雲、真黒に屯(とま)って動かぬ雲、雲の中から生るゝ雲、雲を摩(さす)って移り行く雲、淡くなり、濃くなり、淡くなり、北から東へ、東から西へ、北から西へ、西から南へ、逆流(ぎゃくりゅう)して南から東へ、世界中の煙突(えんとつ)と云う煙突をこゝに集めて煤煙の限りなく涌(わ)く様に、眼を驚かす雲の大行軍(だいこうぐん)、音響(おと)を聞かぬが不思議である...
徳冨健次郎 「みみずのたはこと」
...ライターの火が螢の光りほどに淡く見える...
豊島与志雄 「山上湖」
...新月が淡く原頭のあなたにかかって...
中里介山 「大菩薩峠」
...中国の昔の青墨、即ち松煙墨は、淡くしてみると、非常に美しい色になる...
中谷宇吉郎 「画業二十年」
...淡く彼の心を掠(かす)めて過ぎた...
夏目漱石 「明暗」
...次第に光淡くなりもてゆきて...
萩原朔太郎 「花あやめ」
...淡くキラキラと光つてゐる...
林芙美子 「「リラ」の女達」
...空色の光りはだんだん淡くなり...
ニコライ・ゴーゴリ Nikolai Vasilievitch Gogoli 平井肇訳 「ディカーニカ近郷夜話 後篇」
...あのすき透つた青い眼を見てゐると淡く無限な淋しみに誘はれる...
牧野信一 「籔のほとり」
...美において淡く乏しく貧しいではないか...
柳宗悦 「工藝の道」
...附馬牛(つくもうし)の谷へ越ゆれば早池峯(はやちね)の山は淡く霞(かす)み山の形は菅笠(すげがさ)のごとくまた片仮名(かたかな)のへの字に似たり...
柳田国男 「遠野物語」
...それは過去から呼びかける声のような、極めて淡く、ほのかな、殆んど現実のものではないような匂いであったが、甲斐にはそれがなんであるか、ようやくわかったというようすで、静かに背をまっすぐにした...
山本周五郎 「樅ノ木は残った」
...私の父も表面さも冷淡くさく何事も色に出したことはなかったが...
横光利一 「夜の靴」
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