...涙もさそわずに淡く消えて行った...
有島武郎 「或る女」
...今は夕栄(ゆうば)えの光りを受けてほとんど淡紅色と云い得るまでに淡く薄い色になってゆく...
相馬泰三 「田舎医師の子」
...青梅(あおめ)から多摩川上流の山々が淡く見える...
徳冨健次郎 「みみずのたはこと」
...其処には淡く煙った冬の日の明るみと...
豊島与志雄 「蠱惑」
...君は淡く薄らいでいくことか...
豊島与志雄 「情意の干満」
...何となく電燈の光も淡くなってゆき...
豊島与志雄 「都会の幽気」
...(道灌山の図を見るものは直(ただち)に黄色(こうしょく)を帯びたる淡く軟かき緑色(りょくしょく)とこれに対する濃き緑(みどり)と藍(あい)との調和に感じまた他の一作洲崎弁天海上眺望の図においては黄色と橙色(とうしょく)との調和を見るべし...
永井荷風 「江戸芸術論」
...そのうちで山下秀子という子の印象はあれから二年になるのにちっとも淡くならない...
永井隆 「ロザリオの鎖」
...此入江を抱へた臺が鼻の岬が遙かに南へ突出して霧の如く淡く見えて居る...
長塚節 「佐渡が島」
...渺茫(べうばう)たる海洋は夏霞が淡く棚曳いたといふ程ではないがいくらかどんよりとして唯一抹である...
長塚節 「炭燒のむすめ」
...支那の旧い時代の墨にはいわゆる青墨が多くて、淡くすると、鼠色の蔭にアクアマリンのように透明な青味が見え、非常に美しい色をしている...
中谷宇吉郎 「硯と墨」
...はや宵の燈火(あかり)が淡く灯(とも)っているのである...
萩原朔太郎 「郷愁の詩人 与謝蕪村」
...その上で踊る男と女の裾を淡く照らしあげた...
久生十蘭 「金狼」
...なんと淡く、弱々しく、黄色く、揺らめく光よ...
フレッド・M・ホワイト Fred M. White 奥増夫訳 「見えざる力」
...極めて淡く見過してゐた...
正宗白鳥 「入江のほとり」
...日本人は近代になってから特に弱く浅くモロく淡くなったのだ...
三好十郎 「恐怖の季節」
...宵月の光が淡く往来に濡れていた...
吉川英治 「新書太閤記」
...あたりを淡く照らしていて...
吉川英治 「親鸞」
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