...だからこうして飲みに来るのじゃないか」その云い方がしんみりして嘘のようでないから涙ぐましい気もちになった...
田中貢太郎 「萌黄色の茎」
...そうです、たしかあの中に、「ヴェニスは沈みつつ、ヴェニスは沈みつつ」と云うところがあったと思いますが、ナオミと二人で船に揺られつつ、沖の方から夕靄(ゆうもや)の帳(とばり)を透(とお)して陸の灯影を眺めると、不思議にあの文句が胸に浮んで来て、何だかこう、このまま彼女と果てしも知らぬ遠い世界へ押し流されて行きたいような、涙ぐましい、うッとりと酔った心地になるのでした...
谷崎潤一郎 「痴人の愛」
...緑平老から涙ぐましいほど温かい手紙がくる...
種田山頭火 「行乞記」
...元君から涙ぐましいたよりがあつた...
種田山頭火 「其中日記」
...涙ぐましい一日だった...
種田山頭火 「四国遍路日記」
...涙ぐましい気持に陥りながら...
豊島与志雄 「立枯れ」
...彼は涙ぐましい心地になって...
豊島与志雄 「反抗」
...はたで見ている私の方が気が詰まるようでございます」お品は涙ぐましい眼を落して...
野村胡堂 「銭形平次捕物控」
...まだ何匹かは生きて居ましょう」涙ぐましい声になって...
野村胡堂 「裸身の女仙」
...遠い遠い實在への涙ぐましいあこがれである...
萩原朔太郎 「青猫」
...ここに考えることは人生への或る涙ぐましい思慕の情と...
萩原朔太郎 「郷愁の詩人 与謝蕪村」
...それは漂泊の芭蕉の心に、或る純情な、涙ぐましい、幽玄な「あわれ」を感じさせた...
萩原朔太郎 「郷愁の詩人 与謝蕪村」
...涙ぐましい気持ちだった...
林芙美子 「放浪記(初出)」
...「おお凱旋だ」涙ぐましい感激で今松は眺めていた...
正岡容 「寄席」
...苦痛も見得(みえ)も何物も顧(かえり)みる暇(いとま)はない――片足を無理に急がすおかしさはその時かえって涙ぐましいものだった...
吉川英治 「剣難女難」
...ふっ……と涙ぐましいものがこみあげてくるのをまぎらすべく...
吉川英治 「鳴門秘帖」
...わたくしは少年が寝ぼけたままわたくしの顔を見て微笑むたんびに涙ぐましい気にさへなるのであつた...
吉田絃二郎 「八月の霧島」
...涙ぐましい心持ちになると共に...
和辻哲郎 「地異印象記」
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