...「君は物知りだが、このすぐ前(さき)に、杉浦と云う別荘があるが、あれはどうした家か知らないかね」「あ、杉浦、杉浦なら知ってますよ、ありゃあ、有名な御用商人じゃありませんか、きっとそれでしょう」「そうかも判らないね、昨夜(ゆうべ)、海岸へ散歩に往ってて、そこの女(むすめ)らしい女(おんな)を見たよ」「じゃ、たしかにその杉浦だ、佳(よ)い女(おんな)でしょう、お気に入ったら、お貰いになったら如何(いかが)です」「しかし、ただちょっと見かけただけだよ」「それでもお目にとまったら、好いじゃありませんか」「そりゃ、交際をしてみて、先方の気質が好いとなりゃ、貰わないにも限らないが、君は知ってるかね」「好く知ってます、二人で遊びに往ってみようじゃありませんか」「主人はこっちにいるだろうか」「細君(さいくん)の体が弱いから、この一二年、女(むすめ)をつけて、こっちに置いてありますから、しょっちゅうこっちへ来ております」新聞記者は芳郎の詞(ことば)の意味が判ったので、その夜一人で杉浦の別荘へ往って、主人にそれとなく芳郎のことを話した...
田中貢太郎 「赤い花」
...自分にはまず気に入った...
近松秋江 「別れたる妻に送る手紙」
...あなたの顔が気に入ったわ...
ツルゲーネフ 神西清訳 「はつ恋」
...私はこの言葉が大変気に入ったのである...
戸坂潤 「読書法」
...気に入ったのは、三十年とか五十年とかの時と労力とをかければ出来るに決まっていることで、現にそれは出来ている、そういう問題を科学の力で時を縮められないかという点である...
中谷宇吉郎 「泥炭地双話」
...この言葉がよほど気に入ったものとみえて...
中谷宇吉郎 「日本のこころ」
...お気に入ったら持っていらっしゃいと云う...
夏目漱石 「吾輩は猫である」
...同じことなら八五郎の気に入ったのがよかろうと...
野村胡堂 「銭形平次捕物控」
...どうも気に入ったのが無いんだよ...
野村胡堂 「眠り人形」
...気概のあるところが気に入った」愛一郎の母は...
久生十蘭 「あなたも私も」
...その海岸が気に入ったからしばらく滞在するつもりだ...
堀辰雄 「聖家族」
...このまえ五月に君と一しょに歩いたときからよほど僕の気に入ったものと見えます...
堀辰雄 「大和路・信濃路」
...ジェシも相手の顔が気に入った...
フレッド・M・ホワイト Fred M. White 奥増夫訳 「王冠の重み」
...詩の話いかがでしたろう? お気に入ったところもあったでしょうか...
宮本百合子 「獄中への手紙」
...よっぽどあの辺がお気に入ったらしい...
三好十郎 「樹氷」
...だから私などは今日まで気に入った名前ばかりで一篇を創作した場合は一度もないので...
夢野久作 「創作人物の名前について」
...奥の建始殿の構想など最も気に入ったらしかった...
吉川英治 「三国志」
...石舟斎の気に入ったものか...
吉川英治 「宮本武蔵」
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