...丁度あの染殿(そめどの)の御后(おきさき)に鬼が憑(つ)いたなどと申します通り...
芥川龍之介 「邪宗門」
...―――都のことは定めし方々(かた/″\)も御存知でしょうが、わたしはもと、尊氏将軍のおん時に、糟屋の四郎左衛門と申して近侍に召し使われていまして、十三の年から御所へ参り、礼佛礼社(らいぶつらいしゃ)、月見花見の御供にはずれたことはなく、まめに仕えていますうちに、或る年のことでした、二条殿へお成りになる御供に附いて行きましたら、折節朋輩どもが寄り集って遊んでいましたものと見え、わたしのところへも使をよこして、速く来ないかと云って来ましたので、まだお帰りには間(ま)があるかしらと思いながらお座敷の体(てい)をのぞいて見ますと、ちょうど御酒が二三献過ぎた時分らしく、一人の女房が引出物に、廣蓋(ひろぶた)の上へ小袖を載せて持って出て来るところでしたが、その女房と云うのが、二十(はたち)にはならないほどのうら若さで、練絹の肌小袖に紅花緑葉の単衣(ひとえ)をかさねて、くれないの袴を蹈んで、長い髪を揺りかけている姿の美しさ、染殿の妃、女御更衣と申してもきっと此れほどではあるまいと思われて、あゝ、人間に生れたからにはこう云う人と言葉を交し、枕を並べたいものだが、それにしても今一度出て来てくれないものかしら、せめてもう一と目とっくり顔を見たいものだと思いましたら、その時からあくがれ心地が胸をとざして、忘れようとしても忘れられず、うつゝともない恋になってしまいました...
谷崎潤一郎 「三人法師」
...お染殿はなる可(べ)く此処(ここ)から戻るのだ」「でも龍之助様」お染は鉄砲を掻い抱く恰好で...
野村胡堂 「大江戸黄金狂」
...隣りの部屋で内儀のお染殿が...
野村胡堂 「錢形平次捕物控」
...隣の部屋で内儀のお染殿が...
野村胡堂 「銭形平次捕物控」
...また染殿后(そめどののきさき)ともいうと...
南方熊楠 「十二支考」
...わが邦には古く金剛山の聖人染殿(そめどの)后を恋い餓死して黒鬼となり...
南方熊楠 「十二支考」
...染殿(そめどの)后を犯した婬鬼赤褌を著けて腰に槌を差したと記す...
南方熊楠 「十二支考」
...染殿后(そめどののきさき)を犯した鬼が赤褌に槌をさしいたといい...
南方熊楠 「十二支考」
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