...彼女は、今や、長い歓喜の跡に、疲労を覚え、ほとんど呼吸さえもできず、汗さえも出つくし、その上に頭は昏み、両眼は朦朧とし、両頬も段々熱くなったが、自分でも何だか判らないし、厭になった...
魯迅 井上紅梅訳 「不周山」
...さういふ時身体全体は依然として朦朧と立つてゐる...
高村光太郎 「能の彫刻美」
...すると壁の中から朦朧と初めの武士が出て来て其の前に坐った...
田中貢太郎 「魔王物語」
...朦朧と室内を照して...
谷崎潤一郎 「少年」
...精神は朦朧となりながら...
豊島与志雄 「どぶろく幻想」
...それから もうすこしうえへ体をあげて というのでそうっと抱えてずれた枕のほうへ押しあげようとしたらすこし強くゆれたためにせっかく冴えてた頭がまた朦朧としてしまった...
中勘助 「妹の死」
...十三微(かす)かな燈火(ともしび)の光に朦朧として人が一人います...
中里介山 「大菩薩峠」
...また朦朧とした黒い物影が...
中里介山 「大菩薩峠」
...朦朧として消えてしまう...
萩原朔太郎 「日清戦争異聞」
...瘴気のような不気味な霧がまた朦朧と島の周りを立ち迷いはじめ...
久生十蘭 「海豹島」
...朦朧とあらわれだしては...
久生十蘭 「雲の小径」
...朦朧と闇の中から浮きだしてきて敬礼をすると...
久生十蘭 「だいこん」
...酔眼朦朧となった...
火野葦平 「花と龍」
...意識朦朧となりつつあった...
火野葦平 「花と龍」
...渋い感触の石造の湯舟に浸つて目を閉ぢて居ると心気朦朧としてこの儘いつまでも浸つて居たい様な出るにも出られない様な心持になる...
平野萬里 「晶子鑑賞」
...それさえ不思議だのに更にその焔の上の方で朦朧として青い顔が一つ...
平山蘆江 「怪談」
...總てはたゞ朦朧としてゐるだけだ...
ブロンテイ 十一谷義三郎訳 「ジエィン・エア」
...尤も、私が最初にそれを聞いたときは、無意味な、たゞ眞鍮でも叩くやうな氣がしたのだけれど――「“Da trat hervor Einer, anzusehen wie die Sternen Nacht.”(そのとき、星輝ける夜の如き者現はれぬ)素敵! 素敵!」黒眼勝(くろめがち)の深い瞳を輝かせて、彼女は叫んだ、「ね、朦朧とした、偉大な大天使が、あなたの前に程よく坐つてゐるのよ! この句は誇張したものを百頁讀む程の價値があるわ...
ブロンテイ 十一谷義三郎訳 「ジエィン・エア」
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