...女教師の背なる壁の掛時計が懶うげなる悲鳴をあげて午後三時を報じた時...
石川啄木 「雲は天才である」
...しばらく懶(なま)け癖がぬけなかった...
徳田秋声 「黴」
...凡てを懶く見送ってしまう...
豊島与志雄 「意欲の窒息」
...俺はもう口を利くのも懶くなった...
豊島与志雄 「どぶろく幻想」
...今では却て身動きするのも懶(ものう)いやうな不健全の快感に人を陷入れる...
永井荷風 「新歸朝者日記」
...本堂の方(かた)に木魚(もくぎょ)叩く音いとも懶(ものう)し...
永井荷風 「葡萄棚」
...しかし疎懶(そらん)なるわたくしは今日の所いまだその蒐集(しゅうしゅう)に着手したわけではない...
永井荷風 「向嶋」
...世上の文学雑誌にわが身のことども口ぎたなく悪しざまに書立つるを見てさへ反駁(はんばく)の筆執(と)るに懶(ものう)きほどなれば...
永井荷風 「矢はずぐさ」
...うらゝかに懶き空に...
長塚節 「長塚節歌集 中」
...其ぼうつとして見て居ることから他へ移る運動が懶くてたまらぬのであつた...
長塚節 「隣室の客」
...その懶惰な雌犬は魚芳のゴム靴の音をきくと...
原民喜 「翳」
...海の色を見るのも懶(ものう)くなったらしく...
久生十蘭 「藤九郎の島」
...懶(ものう)げにひとつところで足踏をしてゐるだけであつた...
ニコライ・ゴーゴリ Nikolai Vasilievitch Gogoli 平井肇訳 「ディカーニカ近郷夜話 後篇」
...相手の慇懃(いんぎん)な話を懶(ものう)げに聞いてゐた...
ブロンテイ 十一谷義三郎訳 「ジエィン・エア」
...かつ懶げに映し出しているのであった...
室生犀星 「幻影の都市」
...夜ふかく洋灯(らんぷ)を点火し母のすがたをおそれ書きものをしつ倦むことなかりしわれなるにいまは筆とることのもの懶(う)くたとへよしあしをつづるとも何とてかかる深き溜息をするものぞ...
室生犀星 「忘春詩集」
...だんだん変ってくる自分の老懶(ろうらん)や横着さにも気づかれる...
吉川英治 「忘れ残りの記」
...それ自身が懶(もの)うくなって来た...
蘭郁二郎 「夢鬼」
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