...然う被仰(おつしや)るからには有らうぢやありませんか? それを話して戴く譯にはいかないんですか?』『…………』『智惠子さん! ぼくがこれだけ恥を忍んで言つたのに...
石川啄木 「鳥影」
...実を云うと、自分の恋の打開(うちあ)け話を、書物にして衆人の目にさらすというのは、小説家でない私には、妙に恥しく、苦痛でさえあるのだが、どう考えて見ても、それを書かないでは、物語の筋道(すじみち)を失うので、初代との関係ばかりではなく、その外の同じ様な事実をも、甚(はなはだ)しいのは、一人物との間に醸(かも)された同性恋愛的な事件までをも、恥を忍んで、私は暴露(ばくろ)しなければなるまいかと思う...
江戸川乱歩 「孤島の鬼」
...自分の恥を忍んで結ぶに至った...
大隈重信 「東亜の平和を論ず」
...恥を忍んでちらと見えた売子監督(フロア・ウォウカア)へ駈け寄った...
谷譲次 「踊る地平線」
...――今夜はどうしても飲まなければならないのだつた、引越祝と軽視すべきぢやない、結庵入庵の記念祝宴なのだ、しかも私は例によつて文なしだ、恥を忍んで、といふよりも鉄面皮になつて、樹明兄から五十銭銀貨三枚を借りる(返さなければ掠奪だ!)、街へ出て、鮹、蒲鉾、酒、煙草、葉書を買うて来る、二人でやつてゐるうちに、冬村君もやつてきて、三人で大に愉快にやつた、めでたしめでたし、万歳万歳...
種田山頭火 「其中日記」
...恥を忍んで、返金すべく、N店老主人と対面、それから一杯、苦しい一杯ではあつた...
種田山頭火 「其中日記」
...人のために忍びきれない恥を忍んでいる私をかわいそうだと思って下さいまし...
中里介山 「大菩薩峠」
...彼は、恥を忍んで、下男に己が毎夜の夢のことを告げた...
中島敦 「南島譚」
...「兄上、それはあんまり、――親同士の怨を忘れ、井上流の大筒と、稲富流の焔硝を併せて、天下の為五貫目玉五十丁撃の大業成就の為、井上様の伝書を奪い取れ、――井上様の火薬は五十丁撃の力は無いが、正面からかけ合っては、稲富流と力を協せるとは言うまい――と仰しゃった兄上のお言葉を誠と思い、恥を忍んで、井上様から伝書を盗み取りました」繁代の顔――汗と涙に燻蒸して秋の陽に咲いたよう...
野村胡堂 「江戸の火術」
...恥を忍んで御墨付の行方を探そうという覚悟を定めたのでございます」「…………」「と申しても...
野村胡堂 「銭形平次捕物控」
...恥を忍んでこの土地に舞ひ戻り...
野村胡堂 「錢形平次捕物控」
...恥を忍んで泣付いて行ったら...
二葉亭四迷 「平凡」
...いまは恥を忍んで借りねばなりません...
フレッド・M・ホワイト Fred M. White 奥増夫訳 「黄金薔薇」
...恥を忍んで聴きにいったよ...
正岡容 「寄席」
...恥を忍んで開いて見ると...
宮地嘉六 「老残」
...十樫は恥を忍んで...
山本周五郎 「さぶ」
...恥を忍んでおまえの家へゆきゆきした...
山本周五郎 「柳橋物語」
...不面目な恥を忍んで済州へ帰ってきた...
吉川英治 「新・水滸伝」
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