...トツクやマツグも恍惚(うつとり)としてゐたことは或は僕よりも勝つてゐたでせう...
芥川龍之介 「河童」
...全く心の働きの一切を失つて、唯、恍として、茫として、蕩として、目前の光景に我を忘れて居た自分が、此時僅かに胸の底の底で、あるかなきかの聲で囁やくを得たのは、唯次の一語であつた...
石川啄木 「葬列」
...そして恍惚(うっとり)となっている顔を見て...
泉鏡花 「縁結び」
...君を恍惚たらしめたあの笑顏にまた逢はうなどと望み給ふな...
レミ・ドゥ・グルモン Remy de Gourmont 上田敏訳 「落葉」
...ある朝は銀行へ出勤することも忘れて恍惚(うっとり)と書斎の窓越しに...
橘外男 「陰獣トリステサ」
...恍惚(こうこつ)として身を震わしながら声高に...
ビクトル・ユーゴー Victor Hugo 豊島与志雄訳 「レ・ミゼラブル」
...復讐(ふくしう)跡あり恍(くわう)として血痕(けっこん)...
中里介山 「大菩薩峠」
...庄次は恍惚として白瓜を見て居ました...
長塚節 「白瓜と青瓜」
...詩的恍惚もミツチリと感じられ...
中原中也 「詩壇への抱負」
...恍惚とその顔を眺め...
久生十蘭 「湖畔」
...恍惚(うっとり)となって...
二葉亭四迷 「平凡」
...私といへども空飛ぶ鳥と想ひを交す底の恍惚境に誘はれました...
牧野信一 「満里子のこと」
...空想に浮ぶ沼津の風光の美しさに我知らず恍惚(うっとり)したように呟いた...
宮本百合子 「伊太利亜の古陶」
...恍惚(こうこつ)ともとれる虚脱の色に掩(おお)われ...
山本周五郎 「花も刀も」
...それを見恍(みと)れているきりである...
夢野久作 「路傍の木乃伊」
...淵は今「みづすまし」の美くしい命の「渦巻つなぎ」に満ち、この芸術家的な虫の支配のもとに、見るは唯だメロデイの淵、恍惚の淵、青い淵...
與謝野晶子 「晶子詩篇全集拾遺」
...人々みな恍惚と聞きほれていた...
吉川英治 「三国志」
...彼らの法悦がいかに強く芸術的恍惚に彩(いろど)られているかの一点である...
和辻哲郎 「日本精神史研究」
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