...夕化粧の襟足際立(きわだ)つ手拭の冠(かぶ)り方、襟付の小袖(こそで)、肩から滑り落ちそうなお召(めし)の半纏(はんてん)、お召の前掛、しどけなく引掛(ひっかけ)に結んだ昼夜帯(ちゅうやおび)、凡て現代の道徳家をしては覚えず眉を顰(ひそ)めしめ、警察官をしては坐(そぞろ)に嫌疑の眼(まなこ)を鋭くさせるような国貞振(くにさだぶ)りの年増盛(としまざか)りが、まめまめしく台所に働いている姿は勝手口の破れた水障子、引窓の綱、七輪(しちりん)、水瓶(みずがめ)、竈(かまど)、その傍(そば)の煤(すす)けた柱に貼(は)った荒神様(こうじんさま)のお札(ふだ)なぞ、一体に汚らしく乱雑に見える周囲の道具立(どうぐだて)と相俟(あいま)って、草双紙(くさぞうし)に見るような何という果敢(はかな)い佗住居(わびずまい)の情調、また哥沢(うたざわ)の節廻しに唄い古されたような、何という三絃的情調を示すのであろう...
永井荷風 「妾宅」
...主人の勝手には引窓がない...
夏目漱石 「吾輩は猫である」
...天窓(そらまど)、縁の下、掃除口、引窓、そんなところだ」「入口は出口じゃありませんか、親分、人間が出られるところなら、入れるはずで」「理屈を言うな、――外からは入れなくたって、内からなら出られる場所があるだろう...
野村胡堂 「銭形平次捕物控」
...「引窓は閉っていても...
野村胡堂 「銭形平次捕物控」
...引窓の綱にはかなりの弛(ゆる)みがあり...
野村胡堂 「銭形平次捕物控」
...引窓が引き忘れたやうに開いて居ります...
野村胡堂 「錢形平次捕物控」
...あの引窓を外から開けて入れる道理はない...
野村胡堂 「錢形平次捕物控」
...「引窓は閉つてゐても...
野村胡堂 「錢形平次捕物控」
...ガラツ八が念入りに縛つた引窓の綱の――土竈(へつゝひ)の上の折釘のところの――結び目に引つ掛かると...
野村胡堂 「錢形平次捕物控」
...それに窓框(まどわく)に釘が出てゐるのは驚いたなア」「釘?」「その釘に淺葱(あさぎ)の木綿屑(もめんくづ)が引つ掛つてゐますよ」「丁寧にとつて來てくれ」「いづれにしてもこの引窓からは大の男は入れませんよ」「よし/\...
野村胡堂 「錢形平次捕物控」
...ダラリと下った引窓の綱...
野村胡堂 「銭形平次捕物控」
...引窓から漸く首が出るだけで...
野村胡堂 「銭形平次捕物控」
...「だれが一体姐さんをさらって行ったんでしょう」「それはわかっているじゃないか」「?」「引窓から女一人を引っ抱えて逃げ出したんだ...
野村胡堂 「銭形平次捕物控」
...引窓からながめるような空の一小部分を眺めて...
長谷川時雨 「大橋須磨子」
...引窓の下の薄明るい竈(へつつひ)の前に...
宮地嘉六 「煤煙の臭ひ」
...引窓の繩――スウと引くと暗やみに...
吉川英治 「江戸三国志」
...悩むために生きているようなものだ』ふらふらと引窓(ひきまど)の下へ行ったのである...
吉川英治 「魚紋」
...引窓から屋根へ這い出した...
吉川英治 「宮本武蔵」
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