...「かっちゃんは、去年の暮、ニコライの塔のてっぺんで、べそをかきました」というのです...
竹久夢二 「誰が・何時・何処で・何をした」
...ついでながら、このとしの三月、弾正大弼仲章さまの御使者が、京都より到着なさいまして、去月二十七日京都の御所に於いて、このたび閑院内裏御竣工につきその造営の賞が行はれ、将軍家正二位に陞叙せられた事の知らせがございまして、昨年の暮、従二位に叙せられたばかりのところ、今また重なる御朝恩に浴し、これすでに無上の光栄、かたじけなさにお心をののいて居られる御様子に拝されましたが、さらにその除書に添へられ、かしこくも仙洞御所より、いよいよ忠君の誠を致すべし、との御親書さへ賜りました御気配で、その夜は前庭に面してお出ましのまま、深更まで御寝なさらず、はるかに西の、京の方の空を拝し、しきりに御落涙なさつて居られました...
太宰治 「右大臣実朝」
...利に利を生ませて来年の暮には百倍千倍にしてまたこの家に立ち戻(もど)らせ給(たま)え...
太宰治 「新釈諸国噺」
...年の暮れでなければそれを見ることが出來なかつた...
田山花袋 「道綱の母」
...大学の方へ正式に辞表を出されたのは大正十五年の暮であるから...
中谷宇吉郎 「寺田寅彦の追想」
...彼が去年の暮以来この医者の家で思いがけなく会った二人の男の事を考えた...
夏目漱石 「明暗」
...去年の暮頃から、御府内の美しい娘が、一人二人ずつ行方不明になります...
野村胡堂 「銭形平次捕物控」
...去年の暮に、水銀を湯呑の中から見付けたのも又次郎さ、――昨夜(ゆうべ)煙草を買いに出たついでに、何をしたか解ったものじゃねえ、一応調べるに不思議があるものか」漏れて来るのは、ガラッ八の大啖呵(おおたんか)です...
野村胡堂 「銭形平次捕物控」
...学校そのものもまた! そして年の暮のことどもも――柏墨の「丸八」は大伝馬(おおでんま)町三丁目の老舗(しにせ)で...
長谷川時雨 「旧聞日本橋」
...今年の暮は去年のような事もあるまい...
二葉亭四迷 「平凡」
...(五)「随筆」時代一昨年の暮...
牧野信一 「貧しき文学的経験(文壇へ出るまで)」
...さて昭和十八年の暮近い網代で...
正木不如丘 「釣十二ヶ月」
...幸ありて昨年の暮...
宮城道雄 「音の世界に生きる」
...兆民は前年の暮に保安条例に依(よ)って東京を逐(お)われ...
森鴎外 「渋江抽斎」
...モンテーニュが四カ年にわたる市長職をおわって再びふるさとの城館に起きふしするようになった一五八五年の暮あたりから一五八八年の始めに至る間に...
ミシェル・エーケム・ド・モンテーニュ Michel Eyquem de Montaigne 関根秀雄訳 「モンテーニュ随想録」
...年の暮に孫の七八つなるを近づけ...
柳田国男 「こども風土記」
...昨年の暮に落籍(ひか)した女の写真が手に入った...
夢野久作 「老巡査」
...じゃあ、お甲と一緒にか」「いいえ」「一人で?」「ええ」「お甲とはもう一緒にいないのか」「祇園(ぎおん)藤次を知っているでしょう」「ウム」「藤次とふたりで、去年の暮、世帯をたたんで他国へ逐電(ちくてん)してしまったんです...
吉川英治 「宮本武蔵」
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