...山男のような猟師から...
江戸川乱歩 「鉄塔の怪人」
...」と母に言い、山育ちの娘も本能として、少しは親を大事にする気持があるらしく、その日から娘二人は、山男の身なりで、おどけ者の妹は鍋墨(なべずみ)で父にそっくりの口髭(くちひげ)など描いて出かけ、町人里人の弱そうな者を捜し出してはおどし、女心はこまかく、懐中の金子(きんす)はもとより、にぎりめし、鼻紙、お守り、火打石、爪楊子(つまようじ)のはてまで一物も余さず奪い、家へ帰って、財布の中の金銀よりは、その財布の縞柄(しまがら)の美しきを喜び、次第にこのいまわしき仕事にはげみが出て来て、もはや心底からのおそろしい山賊になってしまったものの如く、雪の峠をたまに通る旅人を待ち伏せているだけでは獲物が少くてつまらぬなどと、すっかり大胆になって里近くまで押しかけ、里の女のつまらぬ櫛笄(くしこうがい)でも手に入れると有頂天になり、姉の春枝は既に十八、しかも妹のお転婆(てんば)にくらべて少しやさしく、自身の荒くれた男姿を情無く思う事もあり、熊の毛皮の下に赤い細帯などこっそりしめてみたりして、さすがにわかい娘の心は動いて、或る日、里近くで旅の絹商人をおどして得た白絹二反、一反ずつわけていそいそ胸に抱いて夕暮の雪道を急ぎ帰る途中に於いて、この姉の考えるには、もうそろそろお正月も近づいたし、あたしは是非とも晴衣(はれぎ)が一枚ほしい、女の子はたまには綺麗(きれい)に着飾らなければ生きている甲斐(かい)が無い、この白絹を藤色(ふじいろ)に染め、初春の着物を仕立てたいのだが裏地が無い、妹にわけてやった絹一反あれば見事な袷(あわせ)が出来るのに、と矢もたてもたまらず、さいぜんわけてやった妹の絹が欲しくなり、「お夏や、お前この白絹をどうする気なの?」と胸をどきどきさせながら、それとなく聞いてみた...
太宰治 「新釈諸国噺」
...私と案内者とは八幡平の山男の家に泊めて貰って...
谷崎潤一郎 「吉野葛」
...それは山男の出来損ないのようなものであろうと...
中里介山 「大菩薩峠」
...君の伯父さんてえな誰だい」「牧山男爵(まきやまだんしゃく)さ」と迷亭はいよいよ真面目である...
夏目漱石 「吾輩は猫である」
...「ワッ、ブルブル」落ち込む水の中から顔を出したのは、猪とはよく言った、髭武者の山男、井桁の下の凹みに隠れて娘に古風な飛道具を吹き付けたのを、生月に発見されて、思いもよらぬ水攻めを食わされたのです...
野村胡堂 「古城の真昼」
...山男のような親爺です...
野村胡堂 「銭形平次捕物控」
...と宿泊所へ訪ねて来る部下達は皆あらくれの山男である...
正木不如丘 「釣十二ヶ月」
...山男達に反抗されたらば...
正木不如丘 「釣十二ヶ月」
...かつていみじくも洩らした言葉――山男はロマンチストだ――は...
松濤明 「山想う心」
...そんなに上等のお料理を誰がおつくりになるのですか」「それは山男の魔法使い……」と...
夢野久作 「豚吉とヒョロ子」
...その山男が魔法使い?」「そうです」「それじゃ...
夢野久作 「豚吉とヒョロ子」
...顔のまっかな山男が...
宮沢賢治 「狼森と笊森、盗森」
...ただひとりその中に町はずれの本屋(ほんや)の主人(しゅじん)が居(い)ましたが山男の無暗(むやみ)にしか爪(つめ)らしいのを見て思わずにやりとしました...
宮沢賢治 「紫紺染について」
...すると山男は面倒臭(めんどうくさ)そうにふところから手を出して立ちあがりました...
宮沢賢治 「紫紺染について」
...二八 三尺ばかりの大草履のことまた山男の草履(ぞうり)を見たという話がある...
柳田国男 「山の人生」
...雪の後に山男の足跡を見ることがある...
柳田国男 「山の人生」
...山男・山姥が町の市日(いちび)に...
柳田国男 「山の人生」
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