...宵から、灯も人声も、往来(ゆきき)の脚も、この前あたりがちょうど切目で、後へ一町、前へ三町、そこにもかしこにも両側の商家軒を並べ、半襟と前垂(まえだれ)の美しい、姐(ねえ)さんが袂(たもと)を連ねて、式(かた)のごとく、お茶あがりまし、お休みなさりまし、お飯(まんま)上りまし、お饂飩(うどん)もござりますと、媚(なま)めかしく呼ぶ中を、頬冠(ほっかむり)やら、高帽やら、菅笠(すげがさ)を被(かぶ)ったのもあり、脚絆(きゃはん)がけに借下駄(かりげた)で、革鞄(かばん)を提げたものもあり、五人づれやら、手を曳(ひ)いたの、一人で大手を振るもあり、笑い興ずるぞめきに交(まじ)って、トンカチリと楊弓(ようきゅう)聞え、諸白(もろはく)を燗(かん)する家(や)ごとの煙、両側の廂(ひさし)を籠(こ)めて、処柄(ところがら)とて春霞(はるがすみ)、神風に靉靆(たなび)く風情、灯(ひ)の影も深く、浅く、奥に、表に、千鳥がけに、ちらちらちらちら、吸殻も三ツ四ツ、地(つち)に溢(こぼ)れて真赤(まっか)な夜道を、人脚繁(しげ)き賑(にぎや)かさ...
泉鏡花 「伊勢之巻」
...こうして兵馬の前に現われたのは今宵がはじめてか知らん...
中里介山 「大菩薩峠」
...なんだか宵闇の縁の下へ姿をくらましてしまったようにも見えました...
中里介山 「大菩薩峠」
...宵(よい)が過ぎると...
中里介山 「大菩薩峠」
...今宵わが『母』は贅沢に生ひ茂つた草の葉に...
中沢臨川 「愛は、力は土より」
...――まだ宵のうちだ...
野村胡堂 「銭形平次捕物控」
...宵の内は路地の入口に灯(あかり)を出して置きますがね...
野村胡堂 「銭形平次捕物控」
...今宵は旧暦の十三夜...
樋口一葉 「十三夜」
...私はもう今宵(こよひ)かぎりどうしても帰る事は致しませぬとて...
樋口一葉 「十三夜」
...六代目の怪談物「宵宮雨」パッとしない...
古川緑波 「古川ロッパ昭和日記」
...何しろ宵から遊べる日は今日だけだから...
古川緑波 「古川ロッパ昭和日記」
...實(まこと)は今宵吾一人の少女を艱苦の中より救はんとするなり...
正岡子規 「花枕」
...かつは物語の種なれば今宵祈って一目見せたまえというに...
南方熊楠 「十二支考」
...さはいへどふた親いますわが家を捨てむとすなる前の宵しづかに更くる刻刻の時計の音ぞ凍りたる...
與謝野晶子 「晶子詩篇全集拾遺」
...今宵弁慶堀で仇討の作法を踏むと誓言を立てておきながら...
吉川英治 「剣難女難」
...今宵の宴をそれほどまで楽しんでくれたのが予も共にうれしい」と...
吉川英治 「三国志」
...月はまだ昇らないが満天の星は宵ながら繚乱(りょうらん)と燦(きら)めいていた...
吉川英治 「三国志」
...右馬介の柳斎もまた、宴の端にいたが、そこの杯盤狼藉(はいばんろうぜき)のすきを窺い、宵にいちど、じぶんの下屋(しもや)へ退(さ)がって、灯もない中で阿新丸とささやいていた...
吉川英治 「私本太平記」
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