...葉子は六月の末以来始めて寝床の上に安々とからだを横たえた...
有島武郎 「或る女」
...あらん限りの憎悪とその憎悪を是認する理性の力をもつて、斥(しりぞ)けやうとしてゐる習俗が、自分と云ふものゝ隅々にまで喰ひ込んで邪魔をするのだと云ふ自覚は、どんな絶望を彼女に与へたか? 彼女は、いくら懸命に正しい真実に味方する憎悪や反抗が遮ぎらうとしても、安々と、それを振り切つて、どんな、自分を除外し侮辱する情実とでも妥協して、目前の安易を持ちつゞけやうとする、頭の隅にいつも潜んでゐる他の卑劣な気持を、自分ながらどうする事も出来ないのであつた...
伊藤野枝 「惑ひ」
...これは決(けつ)してさう安々(やす/\)と考(かんが)へ出(だ)せるはずのものではないのであるが...
今村明恒 「地震の話」
...家康を相手に安々と百両の金子を借り出してきたといへば...
薄田泣菫 「小壺狩」
...安々(やす/\)と娘の暖(あたゝか)さうな掌面と不恰好な自分のをぴたりと合せたと思ふと...
薄田泣菫 「茶話」
...狸ほど安々と手捕(てどり)に出来る獣(けもの)は外(ほか)に無いさうだ...
薄田泣菫 「茶話」
...列車は何の故障もなく安々と支線へ滑り込んだ...
コナン・ドイル 新青年編輯局訳 「臨時急行列車の紛失」
...禄々調査もしないで即日安々と鵜呑みにして了ったのでは...
戸坂潤 「社会時評」
...安々とは死ねやしないさ...
林芙美子 「浮雲」
...いまさらその辺へ一寸安々捨てられもしないし……」「もてあましている?」「全く...
林芙美子 「泣虫小僧」
...かげにりては家の書生がと安々こなされて...
樋口一葉 「ゆく雲」
...どんな愛想のいい娘でもそう安々と歓迎する筈はないから...
久生十蘭 「魔都」
...かかる危険極(きわ)まれる薬品を枕にして能(よ)くも安々と睡(ねむ)り得しことよと...
福田英子 「妾の半生涯」
...」とか「これ位ひのは安々とは見つからないものだらうね...
牧野信一 「淪落の女の日記」
...それにしてもおれは何という安々したいい気持になったことであろう...
室生犀星 「寂しき魚」
...安々とした目をしているのが...
柳田国男 「雪国の春」
...江戸城を安々と官軍に明け渡してしまったのである...
夢野久作 「街頭から見た新東京の裏面」
...安々と身を横たえたくなって来たらしい...
吉川英治 「梅里先生行状記」
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