...聞いたかぼろすけぼうぼう――軽くして責なき人の口の端森のくらやみに住む梟(ふくろふ)の黒き毒に染みたるこゑ街(ちまた)と木木(きぎ)とにひびきわが耳を襲ひて堪へがたしわが耳は夜陰に痛みて心にうつる君が影像を悲しみ窺(うかが)ふかろくして責なきはあしき鳥の性(さが)なり――きいたか...
高村光太郎 「智恵子抄」
...「………夜陰に乗じ...
谷崎潤一郎 「痴人の愛」
...獄舎の庭では夜陰(やいん)に無情の樹木までが互(たがい)に悪事の計画(たくらみ)を囁(ささや)きはせぬかと疑われるので...
永井荷風 「監獄署の裏」
...この原始的にして、進取の心なく、抵抗の力に乏しい小動物は、今し夜陰、こうして食物をあさりに出たものと見える...
中里介山 「大菩薩峠」
...幾分か厳(いか)めしい景気を夜陰に添えたまでで...
夏目漱石 「彼岸過迄」
...夜陰にそつと忍び込んで...
野村胡堂 「錢形平次捕物控」
...それで彼は、『或る日の運動』を読み始めたのであるが、たしかに指摘した筈の多くの誤植活字が、一つも訂正されてゐないので、多少の迷惑は感じたが――「だが私は、自分の小賢しき邪推を、遊戯と心得てゐた頃だつた、愚昧な心の動きを、狡猾な昆虫に例へて、木の葉にかくれ、陽りを見ず、夜陰に乗じて、滑稽な笛を吹く――詩を、作つて悲し気な微笑を洩してゐた頃だつた...
牧野信一 「「或る日の運動」の続き」
...夜陰の露路を單獨で...
牧野信一 「緑の軍港」
...夜陰の川をゆっくりと流れる浮燈籠の様でもあった...
松永延造 「職工と微笑」
...「夜陰怪(け)しからぬ者がまいって...
三上於菟吉 「雪之丞変化」
...夜陰の村に響き渡つて...
吉江喬松 「山岳美觀」
...夜陰奇襲したのである...
吉川英治 「三国志」
...小右京の否やの返辞はなんとしたか」「はっ」「もし、小右京があくまで嫌(いや)と申すなら、夜陰、引ッ攫(さら)っても、ここへ連れまいれとまで申しつけておいたはずだが」「それがはや、お行方も知れませぬので」「なに...
吉川英治 「私本太平記」
...するとこの夜陰(やいん)...
吉川英治 「神州天馬侠」
...夜陰の御伺候でござりますか」「ムム...
吉川英治 「新書太閤記」
...……このままあのお二人をここに置けば、自分の信仰がくずれてしまうか、そうならぬ間に、厳しい詮議(せんぎ)の者の眼に見つかってしまうのは知れたことだが……」「お気の毒だが、出てもらおう、この山荘を」「えっ、追い出すのか」「そうではない、どこか他(ほか)のまったく人の気づかぬ所へ、そっと、夜陰にでも、移っていただくのだ」二希望の光明に燃えて、御所を脱けだした鈴虫の局(つぼね)であった、また松虫の局であった...
吉川英治 「親鸞」
...夜陰に乗じて事を為遂(しと)げるのは...
吉川英治 「宮本武蔵」
...それはすべて夜陰ではないか」「のみならずです!」「ウム」と...
吉川英治 「牢獄の花嫁」
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