...センティメンタルに考えるところに肉慾の世界という堕落した人生観が仮想される...
有島武郎 「惜みなく愛は奪う」
...実際二人はそれほどに堕落した訣でないから...
伊藤左千夫 「野菊の墓」
...世には確かに二葉亭の信ずるような拠(よんどこ)ろない境遇の犠牲となって堕落した天才や...
内田魯庵 「二葉亭四迷の一生」
...「久し振りね、実に、久し振りね、夏にも来てくださらなかったしさ、それから、春にも来てくださらなかったしさ、そうだ、ひどいひどい、去年の夏も来なかったんだ、なあんだ、貞子が卒業してから一回も吉田へ来なかったじゃないか、ばかにしてるわ、東京で文学をやってるんだってね、すごいねえ、貞子を忘れちゃったのね、堕落しているんじゃない? 兄ちゃん! こっちを向いて、顔を見せて! そうれ、ごらん、心にやましきものがあるから、こっちを向けない、堕落してるな、さては、堕落したな、丙種になるのは当り前さ、丙種だなんて、貞子が世間に恥ずかしいわ、志願しなさいよ、可哀想に可哀想に、男と生れて兵隊さんになれないなんて、私だったら泣いて、そうして、血判を押すわ、血判を三つも四つも押してみせる、兄ちゃん! でも本当はねえ、貞子は同情してるのよ、あの、あたしの手紙読んだ? 下手だったでしょう? おや、笑ったな、ちきしょうめ、あたしの手紙を軽蔑したな、そうよ、どうせ、あたしは下手よ、おっちょこちょいの化け猫ですよ、あたしの手紙の、深いふかあい、まごころを蹂躙(じゅうりん)するような悪漢は、のろって、のろって、のろい殺してやるから、そう思え! なんて、寒くない? 吉田は、寒いでしょう? その頸巻(くびまき)、いいわね、誰に編(あ)んでもらったの? いやなひと、にやにや笑いなんかしてさ、知っていますよ、節ちゃんさ、兄ちゃんにはね、あたしと節ちゃんと二人の女性しか無いのさ、なにせ丙種だから、どこへ行ったって、もてやしませんよ、そうでしょう? それだのに、意味ありげに、にやにや笑って、いかにも他にかくれたる女性でもあるような振りして、わあい、見破られた、ごめんね、怒った? 文学をやってるんですってね? むずかしい? お母さんがね、けさね、大失敗したのよ、そうしてみんなに軽蔑されたの、あのね、――」とめどが無いのである...
太宰治 「律子と貞子」
...感謝を忘れたる時は堕落したる時である...
種田山頭火 「松山日記」
...独断的信条のうちに化石しもしくは利得のために堕落したる人種は...
ビクトル・ユーゴー Victor Hugo 豊島与志雄訳 「レ・ミゼラブル」
...そうしてその堕落した江戸の幕府というものも...
中里介山 「大菩薩峠」
...安さんは堕落したと云った...
夏目漱石 「坑夫」
...堕落した青書生と見えるだろう...
夏目漱石 「野分」
...だれかがこんなふうに書く気になった娘ならば堕落した女にちがいない...
フランツ・カフカ Franz Kafka 原田義人訳 「城」
...いかさま堕落した浦島太郎のようである...
久生十蘭 「顎十郎捕物帳」
...「果してお前は堕落した...
久生十蘭 「母子像」
...のみならず、堕落した際、左の手首の辺を負傷したことも判る...
久生十蘭 「魔都」
...日本の窯業は近年においてほど堕落したことはありません...
柳宗悦 「民藝四十年」
...東京人のプロ階級で震災後生活のために堕落したものは非常に多い...
夢野久作 「東京人の堕落時代」
...残るところは堕落した本能ばかりである...
夢野久作 「東京人の堕落時代」
...うぬぼれていい――堕落して構わない――と考えて堕落した事になる...
夢野久作 「東京人の堕落時代」
...堕落した人間の余計な僻(ひが)みだ」と...
與謝野寛 「南洋館」
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