...支那の革命運動の現状に就いて、自分はまだはっきりした事はわからぬが、三合会、哥老会、興中会などの革命党の秘密結社は、孫文を盟主として、もうとっくに大同団結を遂(と)げている様子で、さきに日本に亡命して来た康有為一派の改善主義は、孫文一派の民族革命の思想と相容(あいい)れず、康有為はひそかに日本を去って欧洲に旅立ったらしく、いまは孫文の所謂(いわゆる)三民五憲の説が圧倒的に優勢になって、その確立せられた主義綱領に基づいて、いよいよ活溌な実際行動の季節に突入した状態のように見受けられ孫文ご自身も、東京にあらわれて日本の志士の応援を得て種々画策し、このごろでは東京が支那革命運動の本拠になっているような工合らしいので、留日学生の興奮もすさまじく、寄るとさわると打清興漢の気勢を挙げ、学業も何も投げ棄ててしまっている有様である...
太宰治 「惜別」
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