...栗毛(くりげ)の馬に平文(ひらもん)の鞍(くら)を置いてまたがった武士が一人、鎧櫃(よろいびつ)を荷なった調度掛(ちょうどが)けを従えながら、綾藺笠(あやいがさ)に日をよけて、悠々(ゆうゆう)と通ったあとには、ただ、せわしない燕(つばくら)が、白い腹をひらめかせて、時々、往来の砂をかすめるばかり、板葺(いたぶき)、檜皮葺(ひわだぶき)の屋根の向こうに、むらがっているひでり雲(ぐも)も、さっきから、凝然と、金銀銅鉄を熔(と)かしたまま、小ゆるぎをするけしきはない...
芥川龍之介 「偸盗」
...大樹の如く凝然と動かず...
太宰治 「お伽草紙」
...凝然と考えこんでいる...
林不忘 「安重根」
...たゞ其の人を見る黒い眸子(ひとみ)の澄んで凝然と動かぬ処に...
徳冨健次郎 「みみずのたはこと」
...胸に充満しながらどこまでもひろがってゆくような感慨をもって凝然と...
中勘助 「母の死」
......
中島敦 「河馬」
...何の力が自分にかういふ強い印象を止めたのであらうか凝然と考へてゞも見ようと思ふと却て解らなく成る...
長塚節 「教師」
...佐治君も竹垣の側に立つた儘凝然として居る...
長塚節 「教師」
...太十は凝然と目をしかめて居る...
長塚節 「太十と其犬」
...瞳は凝然として微動もしません...
野村胡堂 「銭形平次捕物控」
...真名古は凝然と身動きもしない...
久生十蘭 「魔都」
...まばたきも見えぬ碧(あお)い眼が凝然としていた...
本庄陸男 「石狩川」
...凝然と無言であてもなく...
トオマス・マン Thomas Mann 実吉捷郎訳 「トリスタン」
...男は暗い格子に手をかけたまま凝然と私の方を見詰めてゐた...
室生犀星 「蒼白き巣窟」
...そのくろずんだ姿をいつまでも凝然と座らせていた...
室生犀星 「しゃりこうべ」
...凝然と立ちすくんでしまった...
柳田国男 「故郷七十年」
...凝然と耳を傾けていた候補生は...
夢野久作 「戦場」
...凝然と眼を閉じているばかりとなった……...
夢野久作 「ドグラ・マグラ」
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