...烈風にはためいてゐる音が聞えて淋しいとも侘びしいとも与兵衛が可愛さうでならなかつた...
太宰治 「音について」
...吹雪の哮(ほ)え狂う北日本海の暗い怒濤(どどう)の陰に怯(おび)えながら瞬いているような侘(わび)しい漁師町と思えば間違いはない...
橘外男 「生不動」
...相も変らぬうずくような侘(わび)しさが...
ツルゲーネフ 神西清訳 「はつ恋」
...途中のある旅館における雨の侘(わび)しい晩に...
徳田秋声 「仮装人物」
...侘(わび)しげに聞えて来た...
徳田秋声 「黴」
...その晩は銀子も家(うち)の侘(わび)しいお膳(ぜん)で...
徳田秋声 「縮図」
...何故(なにゆえ)に我一人かくは心怡(たの)しまぬぞと思い侘(わ)びつつ...
中島敦 「悟浄出世」
...一層情趣が侘しくなり...
萩原朔太郎 「郷愁の詩人 与謝蕪村」
...旅館の侘(わび)しい中庭には...
萩原朔太郎 「猫町」
...一ツ二ツ三ツ四ツ玉蜀黍の粒々は二十五の女の侘しくも物ほしげなる片言なり蒼い海風も黄いろなる黍畑の風も黒い土の吐息も二十五の女心を濡らすかな...
林芙美子 「蒼馬を見たり」
...しみじみと侘しくなってきて...
林芙美子 「新版 放浪記」
...私には何だか小店に曝(さら)された茄子(なす)のようで侘しかった...
林芙美子 「新版 放浪記」
...どうしても侘しいものが附纏ふやうだが...
原民喜 「火の子供」
...待侘びて独りで焦(じ)れていると...
二葉亭四迷 「平凡」
...樵夫以前より一層侘しく暮したと出(い)づ...
南方熊楠 「十二支考」
...人生はまことに侘しく生甲斐なく思われる...
山本周五郎 「青べか日記」
...いわば寺の間借という侘(わび)しき住居である...
吉川英治 「黒田如水」
...秋もいつしか更けて草とりどりに枯れ伏したなかにこの花ばかりがほの白い日かげを宿してそよいでゐるのも侘しいながらに無くてはならぬ眺めである...
若山牧水 「秋草と虫の音」
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