...世が世ならば、倉地は小さな汽船の事務長なんぞをしている男ではない...
有島武郎 「或る女」
...世が世なら木歩の年忌も盛大に行はれ...
心猿 「九月朔日」
...世が世なら、いや、敗軍の将、愚痴(ぐち)は申さぬ...
太宰治 「失敗園」
...世が世なら、なあ...
太宰治 「懶惰の歌留多」
...世が世ならばこういう空位を擁するお方としてではなく...
橘外男 「ナリン殿下への回想」
...「ご隠居さま……どうぞ……粗茶などおめしあがりくださいまして……」「ああああ……世が世ならば竜胆寺妥女の妻! 家老石藤左近将監風情の軒さきに...
橘外男 「亡霊怪猫屋敷」
...世が世ならば猿面かんじゃめをあべこべに追いつめて腹をきらせてくれようものを...
谷崎潤一郎 「盲目物語」
...「世が世なら――もう...
直木三十五 「南国太平記」
...「世が世ならばこんなことはしたくはないが...
中里介山 「大菩薩峠」
...世が世ならば、私共なんぞは、お傍へも寄ることはできませんのに、こんなところへお越し下さいまして、ほんとうに勿体(もったい)ないことでございます」「いや、お吉、お前には何から何まで世話になるばかりで本当に済まぬ、主膳もこのまま朽ち果てるとも限るまいから、何かまた世に出づる時があらば、この恩報じは致すつもりだからな、又六にも悪くなくいっておいてくれよ」「殿様、恐れ多いことでございます...
中里介山 「大菩薩峠」
...世が世ならば、この船を自分の思うままに大手を振って、いずれのところへでも廻航するが、今は世を忍ぶ身の上で、公然たる通航の自由を持っていない...
中里介山 「大菩薩峠」
...世が世ならば当然...
中里介山 「大菩薩峠」
...「あなたも女です、今ここに女性として、私の親近の一人を見ていますと、その女性は、娘盛りという、人生に二度とない花の時代でした、ああ、それを自分は、ただ自分の助手としてのみ、便利有用なる道具としてのみ認めて、女性として、娘ざかりとしての、あなたというものを見て上げることができなかった、むしろ、その余裕を今日まで持ち得なかったということに、大きな慚愧(ざんき)を感じました、己(おの)れというものに熱中している間に、知らず識(し)らず人を犠牲にしていた大きな罪を、覚らずにはいられません、それを、今という今、痛切に責められたものですから、思わず歎息となりましたのです」「何をおっしゃいますか、わたくしには聞えませぬ」とお松も、つとめて冷静を保つ心で駒井の言い分に応対をして、「女としての私が、お傍に働いてお気に召さぬならば、いつでも引下らせていただきます、微塵お怨(うら)み申し上げる心などはござりませぬ、幸い、わたくし、子供の時から骨折仕事にも慣れておりますから、明日からでも開墾の皆様と御一緒に、草も刈りましょう、水も運びましょう、その方が、わたくしの身にも相応しているに違いありません」駒井は、それを押しなだめて申しました、「そういう意味に取ってもらっては迷惑します、今ここから君に離れられては、君に代るべき人がない、人がないから、やむを得ず君に働いていてもらうのではない、たとえ幾人の適任者がありましょうとも、君を措(お)いて、助けてもらえる人は現在の駒井にはないのです、拙者が済まないと思うのは別の意味ではありません、女性の一人を、女性として扱うことをせずに、単に便利なる使用人として一生を廃(すた)らせてしまうその責任が、この駒井にありはしないか、世が世ならば、そなたのために、よき連合いを求めて、立派な家庭の人として仲立(なかだち)して上げるべきはずなのに、それをせずに、こうして、いい気になって、娘ざかりをあだに過させ、今後とても、そういう希望を以て、君を世に出して上げることが覚束ない、それを思うと、自分の罪に戦(おのの)かずにはいられないのです...
中里介山 「大菩薩峠」
...世が世ならば、我々は、そばへも寄れない方ですよ...
林芙美子 「浮雲」
...もしも世が世ならばですね...
深瀬基寛 「悦しき知識」
...世が世ならクリスマスだが...
古川緑波 「古川ロッパ昭和日記」
...世が世なら僕は盗棒を働いてゞも……」堀田は兵野の肩に凭りかゝつて...
牧野信一 「露路の友」
...ぞっとします」「いやか」「世が世なら...
吉川英治 「私本太平記」
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