...不届者...
直木三十五 「南国太平記」
...不届でないか? それとも...
直木三十五 「南国太平記」
...二人はあまり口を利(き)かずに急いだが、金谷坂(かなやざか)あたりでがんりきが、「鼠小僧という奴は面白い奴よ、姫路の殿様の近所にやっぱり大きな殿様のお邸があって、そこでお能舞台が始まっている時のことだ、殿様がこっちから見ていると、舞台の真中に、年のころ十八九ばかりで月代(さかやき)の長く生えた男が伊達模様(だてもよう)の単衣物(ひとえもの)を着て、脇差を一本差して立っているのを殿様が見咎(みとが)めて、あれは何者だ、ついに見かけない奴、不届きな奴、追い出せとお沙汰がある、家来たちが見ると、お能役者のほかに人はいない、殿様はなお頻(しき)りに逐(お)い出せ逐い出せとおっしゃる、仕方がないから舞台へ上って追う真似をしてみたがなんにもいやしない、そのうちに舞台の上を見ると紙片(かみきれ)が落ちている、拾って見るとそれに『鼠小僧御能拝見』と書いてあった、殿様の眼にだけはその姿がちらついたんだが、ほかの者には誰も見えなかった...
中里介山 「大菩薩峠」
...「本所相生町二丁目箱屋惣兵衛、右の者商人の身ながら元来賄金(まひなひきん)を請ひ、府下の模様を内通致し、剰(あまつさ)へ婦人を貪り候段、不届至極につき、一夜天誅を加へ両国橋上に梟(さら)し候所、何者の仕業に候哉(や)、取片附け候段、不届且(かつ)不心得につき、必ず吟味を遂げ同罪に行ふべき者也...
中里介山 「大菩薩峠」
...社会の公民として不適当だなどと評してはもっとも不届(ふとど)きである...
夏目漱石 「草枕」
...「御公儀御政道を誹謗する不届者は言う迄(まで)もない...
野村胡堂 「礫心中」
...「ヘエ、ヘエ、ヘエ」其の儘(まま)大地へへた張りそうになった清作、その上へ嵩(かさ)にかかって、「何処(どこ)へ行くのだ、不届者、入山禁制の制札が見えぬかッ」六尺棒を鳴らしてワメキ立てるのです...
野村胡堂 「天保の飛行術」
...九条家では不届な家職を手打ちにしたというのであるけれど...
原勝郎 「東山時代における一縉紳の生活」
...その不届きなる歩行者に向って...
久生十蘭 「魔都」
...不届きにも自分をからかいに来たのだと思ったもんだから...
久生十蘭 「魔都」
...ひとつ面白いから騒がしてやれなんかという好奇な閑人(ひまじん)があってかかる不届(ふとど)きな悪戯(いたずら)を組織的に始めないともかぎらない...
牧逸馬 「女肉を料理する男」
...微笑しながら片寄せてしまわなければならない――これは不届きなことです...
トオマス・マン Thomas Mann 実吉捷郎訳 「トニオ・クレエゲル」
...日記で見ると、年の暮に弟の友達と自分の知人(しりびと)を新年の歌留多会へ招待することを姉弟して相談した上で客の顔振(かおぶれ)も確定したのだけ記してあったが、僕は善太郎の学友の名を暗記しておいた、彼女(かれ)は義父の圧迫や、空虚な家庭内の淋しき生の悩みなどで神経的な沈鬱な性情に変化していたことは日記や書籍を通じてうかがい知れる、けれども近頃読で居た地袋の新刊書籍(もの)から測るに、その煩悶を信仰によって救われて居る、その信仰に走った刺戟(しげき)と機会とを与えたものがあるね、それは、此紙包を見給え、火鉢の中から出てきた燐寸(マッチ)の燃滓(もえかす)と紙を焼いた灰だ、彼女は莨(たばこ)を喫(のま)ないぜ、この燃殻(もえかす)の紙は脅迫状の紙と同質なんだ、机の下から発見した半巾(ハンカチーフ)ね、あれには手紙を包んであった皺が瞭然(はっきり)残って、しかもナフタリンの匂(におい)が沁(し)みこんで居た、箪笥の中にあったものたることは疑われない、然りとすれば脅迫状の主と、娘とが常から通信をやっていたことになるね、不届な郵便屋だ、ここに捕縛して来た、こりゃ君、女学校で用(つか)う手芸用の箆(へら)だよ、此奴が裏の塀の根元を掘て手紙を埋めたり掘出したりした奴さ、塀の内外(うちそと)は夜なら誰にも知れず一仕事やれるからね、脅迫状にも細かく折った筋が残っていたね覚えて居るだろう、それで近頃衣類を新しく調(こし)らえた形跡がなくて、通信用の書簡箋を鑑定するに及んで物資の窮乏を感ぜない、まア資産階級の仕業(しごと)と判った...
山下利三郎 「誘拐者」
...不届きな奴め...
吉川英治 「新書太閤記」
...――憚(はばか)りもなく、左様な放言して怯(ひる)まぬ馬鹿者だから、わしは汝を、不届き者、不忠者ともうしたのだ」「な! なぜだ?」「浅井、朝倉の両家は、叡山(えいざん)において、かたく、信長様へ対して、和議を申し入れたばかりでないか...
吉川英治 「新書太閤記」
...(どうせ空いている二階だから、いくらでも使ってもいいが、喧嘩と火事は御免ですぜ)との断り附きで、米屋の五兵衛は、てら銭も取らずにここを開放してくれているのみか、稀(たま)には、せんべいや蕎麦(そば)の振舞(ふるまい)までしているほどなのに、その好意に対しても、ここで取っ組みを初めるなぞは、不届き至極だ...
吉川英治 「新編忠臣蔵」
...失うた粗骨は不届きなれど...
吉川英治 「※[#「さんずい+鼾のへん」、第4水準2-79-37]かみ浪人」
...孔子が不届きだというなら云え...
吉川英治 「源頼朝」
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