...雨上りの空がむら雲をだだ黒く一面に乱していたのも...
芥川龍之介 「妖婆」
...時々(とき/″\)むら雲(くも)のはら/\と掛(かゝ)るやうに...
泉鏡太郎 「一席話」
...」雑誌に被(かぶ)せた表紙の上へ、巻紙を添えて出す、かな交りの優しい書(て)で、――折しも月は、むら雲に、影うす暗きをさいわいと、傍(かたえ)に忍びてやりすごし、尚(なお)も人なき野中の細道、薄茅原(すすきかやはら)、押分け押分け、ここは何処(いずこ)と白妙(しろたえ)の、衣打つらん砧(きぬた)の声、幽(かすか)にきこえて、雁音(かりがね)も、遠く雲井に鳴交わし、風すこし打吹きたるに、月皎々(こうこう)と照りながら、むら雨さっと降りいづれば――水茎の墨の色が、はらはらとお嬢さんの睫毛(まつげ)を走った...
泉鏡花 「薄紅梅」
...移って来るそのむら雲を待っている...
泉鏡花 「唄立山心中一曲」
...うちしぐれたるむら雲がくれの程...
上田敏 「月」
...さっきも申しました通り、兄のうしろに立っていますと、見えるものは、空ばかりで、モヤモヤとした、むら雲の中に、兄のほっそりとした洋服姿が、絵の様に浮上って、むら雲の方で動いているのを、兄の身体が宙に漂うかと見誤(みあやま)るばかりでございました...
江戸川乱歩 「押絵と旅する男」
...むら雲とみに月を呑みて...
大町桂月 「月譜」
...……」「月にむら雲だろう」「そう...
太宰治 「人間失格」
...―――むら雲はやり過しつつ待ちうけて月を捉(とら)ふる庭の松が枝貞之助名月や一つ足らざる影法師幸子姉ちやんは東京で見るけふの月悦子―――このあとが妙子の墨絵なのであるが...
谷崎潤一郎 「細雪」
...むら雲のように湧いて出るのを見受けます...
中里介山 「大菩薩峠」
...雨をふくんだむら雲の...
中村清太郎 「ある偃松の独白」
...風騒ぎむら雲迷ふ夕べにも忘るるまなく忘られぬ君という歌の書かれた手紙を...
紫式部 與謝野晶子訳 「源氏物語」
...「むら雲騒ぐ黄海の……」という七五調のと...
柳田国男 「故郷七十年」
...月にむら雲...
夢野久作 「名娼満月」
...紫金色のむら雲舞い立つその凄じい見事さにあッと愕き仰ぐ幻に似た荘厳幽麗な天上の色...
横光利一 「旅愁」
...富士もまたむら雲の渦巻の中に夕日に染まりながら近々と立っていた...
若山牧水 「みなかみ紀行」
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