...彼よりも先に床にあって、彼の方に手をさし延べて彼を誘った女、童貞であるとの彼の正直な告白を聞くと、異常な興味を現わして彼を迎えた女、少しの美しさも持ってはいないが、女であるだけに、柿江がかつて触れてみなかった、皮膚の柔らかさと、滑らかさと、温かさと、匂いとをもって彼を有頂天にした女、……柿江はたんなる肉慾のいかに力強いかを感じはじめねばならなかった...
有島武郎 「星座」
...私には温かい友情というものに饑(う)えているこの人々の心が眼に見えるようであった...
橘外男 「ナリン殿下への回想」
...だいぶ温かくなったので...
田畑修一郎 「石ころ路」
...久しぶりに見る近親の温かさや故郷の山河が何年かの放浪生活のうちで疲れ汚がされ眠らされた彼の魂...
田畑修一郎 「医師高間房一氏」
...大正年間の大噴火に押し出した泥流を被(かぶ)らなかったと思われる部分の山腹は一面にレモン黄色と温かい黒土色との複雑なニュアンスをもって彩(いろど)られた草原に白く曝(さら)された枯木の幹が疎(まば)らに点在している...
寺田寅彦 「雨の上高地」
...最初に患者は厳しい食事(希薄粥、温かい水)か、または絶食を指示される...
マクス・ノイバーガー Max Neuburger 水上茂樹訳 「医学の歴史」
...握つた手は思ひの外温かく少し汗ばんで...
野村胡堂 「錢形平次捕物控」
...砂埃のたつ生温かい日がやつて来た...
原民喜 「画集」
...自分はじつにふっくらと温かい外套にくるまると...
ニコライ・ゴーゴリ 平井肇訳 「外套」
...焔の薔薇色の平和と温かさの中に靜かに坐つてゐた...
ブロンテイ 十一谷義三郎訳 「ジエィン・エア」
...まだそれを気づかせないような温かな小春日和(こはるびより)が何日か続いていた...
堀辰雄 「菜穂子」
...温かい蒲団にくるまってぐっすり眠る生活が自分を待っているのだから...
松濤明 「春の遠山入り」
...温かいところへ……」――成程...
矢田津世子 「罠を跳び越える女」
...温かい人間に出会った...
吉川英治 「大谷刑部」
...あの親切なおもひやりの温かさがなつかしい...
吉川英治 「折々の記」
...この流囚(るしゅう)の身を一時たりと温かに養ってくれたあの人の恩顧を踏みにじッては去れません...
吉川英治 「新・水滸伝」
...「お米や……」そこへ温か味のある声がした...
吉川英治 「鳴門秘帖」
...画面全体が快く調和のとれた、温かい、ニュアンスの多い色で塗られている...
和辻哲郎 「古寺巡礼」
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