...むかし、厩戸の皇子さまも、御二十一歳の折、大臣馬子の無道をお見事に御予言あそばしたとか、天壌と共に窮りの無き、伊勢大廟の尊き御嫡流の御方の御事は纔かに偲び奉るさへ、おそれおほい極みでございますが、将軍家に於いては、早くより厩戸の皇子さまに御心酔と申し上げてよろしいほどに強く傾倒なされ、私どもには、まるで何もわかりませぬけれど、かの、和を以て貴しと為すとかいふお言葉にはじまる十七箇条の御憲法など、まことに万代不易の赫奕たるおさとしで、海のかなたの国々の者たちにも知らせてやりたい、とおつしやつて居られた事もございまして、せめてその御錦袖の端にでも、おあやかり申したいと日頃、念じて居られた御様子で、そのせゐか、まあこれは愚かな私どもの推参な気の迷ひに違ひないのでございませうけれども、ほんの少し、相通ふやうな影が、感ぜられてなりませぬ...
太宰治 「右大臣実朝」
...ほんの少し、もうちょっとでも、早かったなら!」「いや、まだ陽は沈まぬ...
太宰治 「走れメロス」
...その瞬間に現はれたほんの少しの人なつこさ...
田畑修一郎 「医師高間房一氏」
...科学がほんの少しばかり成長して丁度生意気盛(なまいきざか)りの年頃になっているものと思われる...
寺田寅彦 「烏瓜の花と蛾」
...庸三はほんの少しばかり食べものを通したきりであった...
徳田秋声 「仮装人物」
...ほんの少しの處であつたが分らなかつた...
長塚節 「開業醫」
...あるいはそれよりほんの少し多い量だけを...
中谷宇吉郎 「コロラド通信」
...庇(ひさし)の下はほんの少しばかり埋め残してありますが...
野村胡堂 「銭形平次捕物控」
...誰にも賣らないやうにして貰ひたい」「へエへエそれはもう」「これはほんの少しだが...
野村胡堂 「錢形平次捕物控」
...若い男がほんの少しの隙間から自分の心を覗かせれば...
野村胡堂 「錢形平次捕物控」
...「何んです、親分?」「足袋だよ、岡浪之進の家からさらつて來たんだ」「へエ、親分もちよい/\それをやるんですか」「默つて居ろ、それ、足袋の裏に埃(ほこり)が付いてるだらう、少しばかりの古い木屑もある、トントン葺(ぶき)の庇の埃だよ、その足袋に、ほんの少しだが、血が附いて居るだらう、――心掛のある武士は、跣足(はだし)で庇を渡るやうなことをしないと思つたから、此足袋をさらつて來たんだ」「すると?」「下手人はあの浪人者だよ、――相手は手剛い、褌(ふんどし)をしめ直して來い八」「でも、私には腑に落ちませんね、あの浪人は良い男ですよ、氣輕で親切で」「それが術(て)だ」「音も立てずにどうして殺したんでせう、内儀と、金之助を」「最切に當て身を喰はせて目を廻さして置いてそれから殺したんだ」「あ、なーる」「來い八、お前は裏へ廻れ」「合點」二人は左右に別れて、隣の浪人の家を襲ひました...
野村胡堂 「錢形平次捕物控」
...「では、ほんの少し、前後の様子だけでも話して下さい、――少しでも早く知って置き度い事ですから」「ハイ」「第一、あなたとお嬢さんの奈々子さんと二人あの部屋に帰って来た時、後ろから誰か跟(つ)いては来なかったのですか」「女中のお駒さんが少し離れて参りました...
野村胡堂 「笑う悪魔」
...ほんの少ししか食べられなかった...
フランツ・カフカ Franz Kafka 原田義人訳 「火夫」
...ほんの少しでももっていず...
フランツ・カフカ Franz Kafka 原田義人訳 「城」
...私はほんの少しの言葉でも申し分なくすらすらと話すことが出来んのです...
バルザック Honore de Balzac 中島英之訳 「ゴリオ爺さん」
...例へば陽気の工合でほんの少し神経が脹らんだり...
北条民雄 「人間再建」
...ほんの少しばかり切らせて来ました...
森鴎外 「安井夫人」
...まったくだぜ」老人は小さな茶碗にほんの少し注ぎ...
山本周五郎 「季節のない街」
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