...人物や生活はプロレタリアのそれでなくても背後にブルヂヨア生活等の崩壊が暗示されてゐるからである...
芥川龍之介 「プロレタリア文学論」
...何一つ家の中で、自分の手を待つてゐない事はないのだ、それでなくても、若し、一つ二つの事を手伝つて貰つて、彼是(あれこれ)と恩にきなければならない事は、その為めに僅かな時間を得ても、何の役にも立たない程、彼女には、煩(うる)さく、不快であつた...
伊藤野枝 「惑ひ」
...それでなくても評判の悪い矢先ですから...
大倉※[#「火+華」、第3水準1-87-62]子 「機密の魅惑」
...それでなくても人目につき易(やす)くっていらっしゃるから...
谷崎潤一郎 「細雪」
...それでなくてもそう云うことは差控えるべき時局下であるから...
谷崎潤一郎 「細雪」
...蓋(けだ)し、それでなくても、自分は父の老大納言と共に母に見限られたのであると思っていた滋幹は、母に対して一種の僻(ひが)みを抱いていたらしいので、そんなことが一層母との間を心理的に遠ざける因となったのでもあろう...
谷崎潤一郎 「少将滋幹の母」
...それでなくてもあの女は...
谷崎潤一郎 「猫と庄造と二人のおんな」
...それでなくても身分の高い人の目鼻立ちをまじ/\と眺めることは出来ないものだのに...
谷崎潤一郎 「武州公秘話」
...それでなくても攻めあぐんでいた筑摩方は...
谷崎潤一郎 「武州公秘話」
...それでなくても暑くてたまらないのに...
種田山頭火 「行乞記」
...それでなくても息をぬく場所が...
徳田秋声 「仮装人物」
...例のちょっとした發作で……」「馬鹿なことを! あの子はき・わ・め・て・重態なんです! それでなくてもあなたは當然...
ドストエーフスキイ 神西清訳 「永遠の夫」
...手傳(てつだひ)に來(き)て居(ゐ)た女房等(にようばうら)はそれでなくても膳立(ぜんだて)をする客(きやく)が少(すくな)くて暇(ひま)であつたから滅切(めつきり)手持(てもち)がなくなつた...
長塚節 「土」
...それでなくても、何といっても千年の月日は恐しいものである...
中谷宇吉郎 「壁画摸写」
...それでなくても、彼にはこの世の中に生れて来たことが不思議に堪えがたいもののようになっていたが、学校の厭(いや)な空気はともすれば、居たたまらないものになっていた...
原民喜 「冬日記」
...それでなくても濃紅姫の事を思うて...
夢野久作 「白髪小僧」
...それでなくても、都人の距離感と、また生活関心は、未開土の東国などよりは、難波津(なにわづ)から瀬戸の海につづく南海方面のほうが、はるかに、身ぢかなものだった...
吉川英治 「平の将門」
...それでなくても大して柔和な人間でもなかった彼らは...
神西清訳 「ムツェンスク郡のマクベス夫人」
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