...人物や生活はプロレタリアのそれでなくても背後にブルヂヨア生活等の崩壊が暗示されてゐるからである...
芥川龍之介 「プロレタリア文学論」
...それでなくても黒眼勝の大きな眼が一層真黒に見えるのです...
大倉※[#「火+華」、第3水準1-87-62]子 「機密の魅惑」
...それでなくても老母のごはんが足りないのに...
太宰治 「惜別」
...雪子はそれでなくても...
谷崎潤一郎 「細雪」
...それでなくても、雪子ちゃんの縁談と云うと何か不吉な前兆に遇うことがしばしばであるのに、たまたま今度の見合いの場所が東京と云う廻り合せになったので、何となく幸先(さいさき)が悪いような気がし、東京では又ロクでもないことが起るのではないか、二度あることは三度である、と云うような予感がしないではなかったのであるが、でも今年の八月に三度目の上京を無事に済ましているのであるし、而(しか)もその時は久振に夫と愉快な旅行をして上々の首尾だったのであるから、最早や「東京行き」に纏(まつ)わる悪因縁は絶たれたのである、と云う風に、努めて考えていたのであった...
谷崎潤一郎 「細雪」
...それでなくても立ち居がのろくなっているのに...
谷崎潤一郎 「少将滋幹の母」
...それでなくても狭い曲りくねった黒河の谿はいよいよ狭く思われ...
アントン・チェーホフ Anton Chekhov 神西清訳 「決闘」
...どうして疑いを起こさずにいられるものですか? それでなくても...
ドストエーフスキイ 中山省三郎訳 「カラマゾフの兄弟」
...それでなくても其(そ)の知(し)りたがり聞(き)きたがる性情(せいじやう)を刺戟(しげき)すべきことは些細(ささい)であるとはいひながら相(あひ)尋(つい)で彼等(かれら)の耳(みゝ)に聞(きこ)えるので勘次(かんじ)のみが問題(もんだい)では無(な)くなるのである...
長塚節 「土」
...それでなくても好奇の目を視張るに十分な対象だつたのだ...
中原中也 「その頃の生活」
...それでなくても、到る所、山の神域は、「下乗」の石が立っていないのをいい事にして、参道から玉垣を越え、神殿までもおかそうとする...
中村清太郎 「ある偃松の独白」
...それでなくても他の固体の表面についてそこで核が得られれば...
中谷宇吉郎 「樹氷の科学」
...それでなくても、何といっても千年の月日は恐しいものである...
中谷宇吉郎 「壁画摸写」
...何でも穴の向うは、がっくり落(おち)か、それでなくても、よほど勾配(こうばい)の急な坂に違ないと見当(けんとう)をつけた...
夏目漱石 「坑夫」
...それでなくても現実の脅迫が強すぎた...
原民喜 「滑走」
...それでなくても、鬱憤にくるまれていた、扶、隆の血気は、わけもなく誘い出された...
吉川英治 「平の将門」
...それでなくても、彼へは――あの武蔵という人間に対しては、どういうものか反感があってならなかったところである...
吉川英治 「宮本武蔵」
...それでなくても漬け樽のような形をした腹を...
ルナアル Jules Renard 岸田国士訳 「ぶどう畑のぶどう作り」
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