...そのくせ街幅は東京の銀座などのような広さはなくて...
上村松園 「余齢初旅」
...そのくせ潔癖が異常に強くて...
谷崎潤一郎 「細雪」
...泣(な)きたいような気もするけれど、そのくせ人形が、おかしくておかしくてたまらない...
フョードル・ドストエフスキー 神西清訳 「キリストのヨルカに召された少年」
...この小銭を、種類によって、ザクリザクリとわけて数えながら言いました、「有るところにはあるもんだなあ、金というやつは――」「ほんとに、そうですね、有るところには有るものです、あのお嬢様のお家には、いったいどのくらいあるんでしょうかしら」とお雪ちゃんが相槌(あいづち)を打つと、米友公が、「有るところにはあるが、ねえとなるとまるっきりねえのが金だ」「全くその通りよ、お金持のところには唸(うな)るほどあっても、貧乏人のところには薬にしたくもないのですから」「有るところには有り過ぎるほどあって、ねえところには無さ過ぎるほどねえ、そのくせ、誰もみんなこいつを欲しがっていることは同じなんだが、どうしてまた、こいつが集まるところへはうんと集まり、来ねえところへはちっとも来やがらねえんだろう...
中里介山 「大菩薩峠」
...そのくせあなたが東京にいる頃(ころ)には...
夏目漱石 「こころ」
...そのくせ彼は海へ入るたんびにどこかに怪我(けが)をしない事はなかったのです...
夏目漱石 「こころ」
...其癖(そのくせ)夕方(ゆふがた)迄(まで)は坐(すわ)り續(つゞ)けられなかつた...
夏目漱石 「門」
...きちょうめんな割り膝で、そのくせ、勇ましく腕まくりして、爽快に語る風貌だけが、記憶の底に生々しい...
野村胡堂 「胡堂百話」
...そのくせ何処か小意気なところのある若い衆です...
野村胡堂 「銭形平次捕物控」
...いろいろな顔が、そのくせ、何とも説明のつかぬ相似で貫かれながら、じっと、竜太郎を眺めていた...
久生十蘭 「墓地展望亭」
...そのくせしょっちゅう自分ではいっしょうけんめい目を覚(さ)ましているつもりになっていた...
マロ Malot 楠山正雄訳 「家なき子」
...そのくせ、それでいて、遠いきりかと云えば、ことによってはやはりそれなり近いのだから...
宮本百合子 「獄中への手紙」
...10390そのくせ袖手傍看(しゅうしゅぼうかん)の分疏(いいわけ)しかしません...
Johann Wolfgang von Goethe 森鴎外訳 「ファウスト」
...そのくせに坐(すわ)り丈(ぜい)はなかなかあッて...
山田美妙 「武蔵野」
...そのくせ、まだ娘かとも見えるほど、うら若いのに、「私にも、幼子(おさなご)がありまする...
吉川英治 「私本太平記」
...しかし彼は、正面の攻撃にはむかわず、伊賀方面をまごまごして、そのくせ、いちばん遅くまで、畿内に兵をとどめていたなど、とかく不審な行動をとっていた者ですが」「いや、その高氏なら、密勅の呼びかけもしていません...
吉川英治 「私本太平記」
...そのくせ泥酔自転車で往来の雛妓を刎(は)ね飛ばして入院騒ぎを背負ったり...
吉川英治 「忘れ残りの記」
...そのくせ、いくら旅をして来ても、一向利口にならない...
ルナール Jules Renard 岸田国士訳 「博物誌」
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