...そんなをりに口でも渇いてゐると、誰もがその二つ三つを摘み取つて、そつと口に含むものだが、ついそれなりにうちやつておいたなら、いづれはそこらを飛び廻つてゐる小鳥の餌にでもなるのだらうが、さうだと思ひながらも知らず知らずのうちに盗み食ひして、一粒も残さず採りつくしてしまふのも、その味が棄てがたいからで、前歯でそつと噛み割ると、なかに盛られた甘い汁が、そのまま跡形もなく舌の上にとろけゆく口触りのやはらかさ、こまやかさ...
薄田泣菫 「独楽園」
...漸く病癒えたばかりの新婦の看護ぶりのこまやかさは...
辰野隆 「感傷主義」
...きめのこまやかさと色つやのなまめかしさは...
谷崎潤一郎 「痴人の愛」
...山のみどりのこまやかさ...
種田山頭火 「行乞記」
...・山をあるけば木の実ひらふともなく・水くんでくる草の実ついてくる森はまづいりくちの櫨を染め夜はしづかだつた、雨の音、落葉の音、そして虫の声、鳥の声、きちんと机にむいて、芭蕉句集を読みかへした、すぐれた句が秋の部に多いのは当然であるが、さすがに芭蕉の心境はれいろうとうてつ、一塵を立せず、孤高独歩の寂静三昧である、深さ、静けさ、こまやかさ、わびしさ、――東洋的、日本的、仏教的(禅)なものが、しん/\として掬めども尽きない...
種田山頭火 「其中日記」
...酔心地のこまやかさ...
種田山頭火 「其中日記」
...髪の毛の一本一本にまで忘れ得ぬ愛情をつないでいる神のその愛のこまやかさ...
永井隆 「この子を残して」
...情誼のこまやかさには敬服している...
野村胡堂 「随筆銭形平次」
...女のこまやかさよ...
フレッド・M・ホワイト Fred M. White 奥増夫訳 「玉手箱」
...どんな洞察こまやかさで子らの成長の過程と人生の曲折を同感し...
宮本百合子 「結婚論の性格」
...こういう心持のキメのこまやかさというものは...
宮本百合子 「獄中への手紙」
...こういう天然の情のこまやかさと...
宮本百合子 「獄中への手紙」
...そして、一般的な場合としていうとき、そこにある人間の高さ、美しさ、こまやかさ、絶え間のない心くばりの交流について、そのほんの一部分のことしかふれ得ないのですものね...
宮本百合子 「獄中への手紙」
...源氏に時々答える言葉には情のこまやかさが見えた...
紫式部 與謝野晶子訳 「源氏物語」
...こんな話にも故宮の御感情のこまやかさが忍ばれて源氏は恋しく思った...
紫式部 與謝野晶子訳 「源氏物語」
...まして閨中(けいちゅう)のあの情のこまやかさ...
山本周五郎 「ゆうれい貸屋」
...小鳥好きな小僧氏の勤勉と愛情のこまやかさを見て...
吉川英治 「折々の記」
...情(じょう)のこまやかさに...
吉川英治 「私本太平記」
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