...くすんだ顔を上げて周匝(あたり)を見る...
石川啄木 「菊池君」
...朱の色のくすんだ古風な仁王門...
心猿 「露伴忌」
...馬車が言いつけた番地の前に停った時、霧が少しはれて、くすんだ街や、けばけばしく飾り立てた酒場や、低級なフランス式料理店や、三文雑誌や安サラダを売る店や、あちこちの家の戸口にむれ集まっているぼろ服を着たたくさんの子供たちや、朝酒を飲みに鍵を手にして出てきたいろんな国々の大ぜいの女たちなどが、彼の眼に映った...
スティーヴンスン Stevenson Robert Louis 佐々木直次郎訳 「ジーキル博士とハイド氏の怪事件」
...ことごとく言うに言われぬ美しくくすんだいい色彩を示しています...
寺田寅彦 「先生への通信」
...くすんだ灰色の地には動くものもなく...
アーサー・コナン・ドイル Arthur Conan Doyle 大久保ゆう訳 「緋のエチュード」
...くすんだ色の陶器の瓶などが並んでいて...
豊島与志雄 「立札」
...ふしだらの限りをつくすんだ...
豊島与志雄 「南さんの恋人」
...冬の霜枯の山川はまことにローマ宮殿に古きゴブランの壁掛のくすんだ渋い美しさにも比ぶべくか...
中谷宇吉郎 「寺田寅彦の追想」
...周囲一里ほどの深くすんだ湖水が...
久生十蘭 「肌色の月」
...これでどうやら事なくすんだが...
久生十蘭 「平賀源内捕物帳」
...くすみにくすんだ大玄関の式台と...
久生十蘭 「我が家の楽園」
...くすんだ馬巣織(ばすお)り家具...
フレッド・M・ホワイト Fred M. White 奥増夫訳 「本命馬」
...丸い大きな太陽がくすんだ地面を照らした...
フレッド・M・ホワイト Fred M. White 奥増夫訳 「四日闇夜」
...寒そうな、くすんだ朝だ、と思って見ていると、ずっとうしろの曲り角を、ひょっくりとS君がまがった...
水野葉舟 「帰途」
...然しその時は事なくすんだ...
宮地嘉六 「ある職工の手記」
...くすんだのもみんな...
室生犀星 「生涯の垣根」
...緑(みどり)の褪(さ)めた、砂と塵挨(ごみ)だらけの、水気(みづけ)のない、いぢけた、倭(ひく)い椰子の木立、木伊乃(みいら)にした、動(うご)かない天狗猿、死(し)んだ、みすぼらしい、ちつぽけな鰐、くすんだ、黄土(わうど)とCHOCOLAT(シヨコラア)の色をした廉物(やすもの)の、摸造の爪哇(ジヤワ)更紗、まだ一度も生血(いきち)を嘗めず、魂(たましひ)の入らぬ、ひよろ長い毒矢(どくや)の数々(かず/″\)……え? これが大正博覧会の南洋館?最初の二つの室(しつ)を観て歩いて、おれは思はずおれの子供等に言つた、「こんなぢやない! こんなぢやない! 南洋は!」そして、おれは新嘉坡を想ひ出した...
與謝野寛 「南洋館」
...くすんだ朱の火星が...
蘭郁二郎 「鉄路」
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