...怪塔王は日頃に似あわぬおとなしいことをいって...
海野十三 「怪塔王」
...伸びかかつた蹴爪(けづめ)でおとなしい上院議員を跳ね飛ばしかねないやうな素振を見せた...
薄田泣菫 「茶話」
...割合におとなしい動物でありますけれど...
太宰治 「黄村先生言行録」
...とてもおとなしい...
太宰治 「十二月八日」
...いったいにおとなしい生れであったと思われます...
田中貢太郎 「薬指の曲り」
...あのおとなしい静かな兄弟子が...
田山花袋 「ある僧の奇蹟」
...その女は初会(しょかい)から清三の人並みすぐれた男ぶりとやさしいおとなしい様子とになみなみならぬ情を見せたのであるが...
田山花袋 「田舎教師」
...ただこうどことなくおとなしいようなところがええいうのどす」「じゃ...
近松秋江 「霜凍る宵」
...おとなしい眼を不審の色に曇らせて...
中里介山 「大菩薩峠」
...「そう頭から冷やかしちゃ話が出来ない」と故(もと)のようなおとなしい調子で云う...
夏目漱石 「虞美人草」
...猫のようにおとなしい庄吉が...
久生十蘭 「ボニン島物語」
...―――同志よ固く結べ 生死を共にせん―――いかなる迫害にも あくまで屈せずに―――われら若き兵士プロレタリアのそれは牢獄の散歩の時間だった独房の前で彼のトランクを小脇に抱えているむかしの友同志下司と彼の口笛に七年ぶりで出あったのは!彼は勇敢な、おとなしい、口笛の上手な少年だっただが夏の朝の澄明さに似たあわたゞしい生活が流れてから境遇と政治の過流が私たちを異った都市と都市との地下に埋めたそして今日―――汽船(ふね)が青く冴えた土佐沖を越えてこの同じ牢獄に、やゝ疲れた彼を運んで来たのだった!彼は大阪の地区で精悍な仕事をして来た敗北と転向の大波が戦線にのしかゝろうとした時法廷で彼は昂然と皇帝を罵倒した危機の前に彼は屈辱を知らなかった彼は党のために彼の最も貴重な青春の期間を賭けた五年の拷問と苦役が彼のつんつるてんな赤衣からはみ出た長身をけづり立て彼の眼を故郷の鷲のように鋭くした私たちは元気に挨拶を交わしたおゝ、若さが私たちを耐えしめた―――彼は私と同じく二十一だった!彼は昔ながらのたくましい下司だったじめ/\した陰欝な石廊で彼は斜めに密閉した中世の王宮のような天窓に向いてこけた、美しい、青ざめた頬をほてらせひょうひょうと口笛をふいたタクトに合わせて私はぢっと朽ちた床板をふみならしながらしめっぽい円天井の破風に譜のない歌を聞き敷石にひゞく同志の調べを爽やかに身近かに感じた―――朝やけの空仰げ 勝利近づけり―――搾取なき自由の土地 戦い取らん―――われら若き兵士 プロレタリアの離れた石廊のかなたでなぜとなく私はうっとりと聞き入ったそれは恐れを知らぬ少年のような、明朗な自由の歌だった看守の声も、敷石のきしみも窓越しの裁断機や鋸(のこ)の歌もすべての響きが工場の塀越しに消えていった―――その塀はこんなにも低かった!若いボルセヴィキの吹くコンツモールの曲はコンクリの高壁を越えてひろ/″\と谺したそれは夏の朗らかな幽囚の青空に、いつまでもいつまでも響いていた………...
槇村浩 「同志下司順吉」
...あたしがゼリイを食べるからおとなしいのだといいます...
ルイザ・メイ・オルコット L. M. Alcott 水谷まさる訳 「若草物語」
...右のとなりはおとなしい日本風の娘さんで...
宮本百合子 「獄中への手紙」
...おとなしい人間じゃありますが...
三好十郎 「樹氷」
...そのくせおとなしい人だそうです...
ライネル・マリア・リルケ Rainer Maria Rilke 森鴎外訳 「家常茶飯」
...おとなしい美しい娘になった...
山本周五郎 「青べか日記」
...そのくせおとなしい庄吉よりもおせんには彼のほうが近しい感じで...
山本周五郎 「柳橋物語」
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