...「あのう、侯爵さまは、その夜、音楽の話をなさったり、それから御愛用の音叉(おんさ)を、ぴーんと鳴らしてみたりなさらなかったでしょうかしら」「ああ、あの有名なる音叉ですか...
海野十三 「暗号音盤事件」
...あのう、それ、もっとあとになさいませ...
海野十三 「爆薬の花籠」
...あのうつくしい顔は...
江戸川乱歩 「宇宙怪人」
...それからゆばうまにを一つ……あのう」と北湖先生は急がしげに財布を懷から出して其中から長い指で二十錢銀貨を一つ摘み出されたが三藏の方を見て「山僧君あなた酒はどうやらでやすな...
高濱虚子 「俳諧師」
...「あのうな、南禅寺へ電話をかけておくれでないか、―――二人で行くから、静かな座敷を取っておいてくれるように」「お二人さんでおいきやすの?」「折角腕によりをかけたんだろうから、お客を残らず浚(さら)って行っちゃあ気の毒だと思ってな」「そしたら残っておいやすお方が気の毒やおへんか、いっそのことみんなでおいきやすな」「御馳走(ちそう)は何が出来るんだい?」「なにもおへんえ」「甘子(あまご)はどうした?」「空揚げにしょう思(おも)てますけど、………」「それから?」「若鮎(わかあゆ)の塩焼」「それから?」「牛蒡(ごぼう)のしらあえ」「まあ、要さん、肴(さかな)が悪いが、ゆっくり飲んでいて貰いましょう」「貧乏鬮(くじ)お引きやしたなあ」「なあに、板前が瓢亭以上ですから、たんと御馳走になりますよ」「じゃあ、おい、着物を出しといとくれ」そう云って老人は二階へ上った...
谷崎潤一郎 「蓼喰う虫」
...光子さんからわたしの方い来ましたのんは一(ひと)ッつ残らず大事にしもて置いたのですが、わたしの方から光子さんい上げたのんが中に交ってますのんは、それはあのう、あとで話しますけど、少し事情ありまして、あの方の家から取り戻しましたのんです...
谷崎潤一郎 「卍(まんじ)」
...それからあのう、先度(せんど)のことはみんな自分が阿呆(あほ)だしてんよって、誰恨んだり怒ったりすることあれしませんけど、あんたも今更わたしのこと『姉ちゃん』やなんていわんといて頂戴...
谷崎潤一郎 「卍(まんじ)」
...それに極まり悪いいうても初めの日イだけで、馴(な)れてみましたら女子衆(おなごしゅ)やかいも心得てて、帰りがおそなった時やらは、家の方い電話かけて褄目(つまめ)合うようにしてくれますし、……そんな訳で、しまいには別々に出かけて行って彼処(あそこ)から電話で呼び出したり、何ぞ急用出来た時にはお梅どんから知らしてもろたり、……ま、それもよろしいのんですけど、光子さんの家ではお梅どんだけやのうて、お母さんも、外の女子衆も、みんながそこの家の電話番号知ってるらしいて、ときどき私や光子さんにかかって来ることありますのんで、何ぞ家の方ええように欺(だま)したあるに違いない思てたのんですが、或る日一人で先行(い)て待ってたあいだに、「へえ、そうだす、……へえ、いいえ、あのう、さっきから待っておりますけど、まだ来やはれしまへん...
谷崎潤一郎 「卍(まんじ)」
...この期(ご)におよんであのうそつきの信長になんの遠慮をすることがある...
谷崎潤一郎 「盲目物語」
...あのうたはたしかに我々の心にひゞく...
種田山頭火 「行乞記」
...巖ちゃんは、學校でならった、民主主義と云うことをふっと思い出したので、顏をまっかにして、「あのう……...
林芙美子 「おにおん倶樂部」
...バルブレンのおっかあのうちのはひじょうに固(かた)くって...
マロ Malot 楠山正雄訳 「家なき子」
...あのう、なには、無事に帰ったんですか?三好 いやあ、会えるまで此処にがんばるんだって、応接の方にズッと居るんですよ...
三好十郎 「好日」
...(女中が廊下を奥へ歩いて行く足音――マイクはそれに従って行く)……鈴 ……あのう(言いかけた言葉をたち切って奥座敷の障子の内から...
三好十郎 「樹氷」
...「あのうちに弥太っていう船頭がいるから...
山本周五郎 「五瓣の椿」
...あのう十二時二十分の貨物列車の下つて来るまでには少々間がありましたので...
横光利一 「マルクスの審判」
...賀名生(あのう)へ逃げ落ちられたあとなのだ...
吉川英治 「私本太平記」
...賀名生(あのう)の奥へ...
吉川英治 「私本太平記」
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