...楡の家第一部一九二六年九月七日、O村にて菜穂子、私はこの日記をお前にいつか読んで貰うために書いておこうと思う...
堀辰雄 「菜穂子」
...……それからこの夏私の来るまで此処で一人で本ばかり読んで暮らしていたらしい菜穂子だって私にはあんなに手のつけようのない娘にしか思われないのに...
堀辰雄 「菜穂子」
...爺やには菜穂子の起きてくるまで私達の朝飯の用意をするのを待っているように云いつけておいて...
堀辰雄 「菜穂子」
...急に菜穂子は自分の結婚生活がこれまでのような落(お)ち著(つ)きを失い出したのを感じた...
堀辰雄 「菜穂子」
...菜穂子は用事のため夫と一しょに銀座に出たとき...
堀辰雄 「菜穂子」
...菜穂子は、形のいい葉が風に揺れて光っている一方の梢と、痛々しいまでに枯れたもう一方の梢とを見比べながら、「私もあんな風に生きているのだわ、きっと...
堀辰雄 「菜穂子」
...そして菜穂子が自分の方を空(うつ)けたように見据えているのに気づくと...
堀辰雄 「菜穂子」
...「……お前は家へ帰りたいとは思わないかい?」暗がりの中で菜穂子は思わず身を竦(すく)めた...
堀辰雄 「菜穂子」
...菜穂子は毎日日課の一つとして...
堀辰雄 「菜穂子」
...」菜穂子は何か咎(とが)めるようなきびしい目つきで...
堀辰雄 「菜穂子」
...今ならば菜穂子がどんな心の中の辿(たど)りにくい道程を彼に聞かせても...
堀辰雄 「菜穂子」
...……菜穂子の考えはいつもそうやって自分の惨めさに突き当った儘...
堀辰雄 「菜穂子」
...菜穂子は、とうとう矢(や)も楯(たて)もたまらなくなって、オウヴア・シュウズを穿(は)いた儘(まま)、何度も他の患者や看護婦に見つかりそうになっては自分の病室に引き返したりしていたが、漸(や)っと誰にも見られずに露台づたいに療養所の裏口から抜け出した...
堀辰雄 「菜穂子」
...戸口の近くに外套をきて立っている菜穂子の方をじろじろ見ながら...
堀辰雄 「菜穂子」
...菜穂子は眼に見ることの出来ない大きな力にでも押し上げられるようにして...
堀辰雄 「菜穂子」
...それに対して菜穂子が只かすかなほほ笑(え)みを浮べながら...
堀辰雄 「菜穂子」
...明日菜穂子が無条件で山へ帰ると云う二人の約束が...
堀辰雄 「菜穂子」
...再びそれを開けたときは、こんどは私はお前の顔の方へそれを向けながら、「……私はね、菜穂子、この頃になって漸と女ではなくなったのよ...
堀辰雄 「楡の家」
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